着替えの時間は、労働時間?

先日、「着替えの時間は労働時間と見なければならないのか?」との質問を受けました。

『従業員は、本来”作業に適した服装”で労務を提供しなければならず、不適当な服装と判断した場合は、会社はその就業を拒否できる。』とういうのが学説(コメンタール労働基準法)の通説で、着替えの時間は原則として労働時間には当たらないと考えます。

では、例外とするその時間が会社の指揮命令下にある労働時間と認められる具体的な場合とは、

① 会社の命令で着替えることが義務付けられ拘束されており、かつ服装について点検がその場で行われる場合

② 業務の性質上、作業服に着替えて作業しなければならないもので、服装管理を会社が行なっている場合(警察官・消防士・ホテルのボーイ・ガードマン等)

③ 業務の性質上、特殊な服装をしなければならない場合(熱処理現場の耐熱服、商品等の宣伝用服装)

以上から、業務上の必要性、義務性、会社の直接的な指揮命令下で行なう等拘束性がある場合は、労働時間と認められ可能性が高くなります。

しかし、会社の規則で、始業時刻までに作業服・安全帽等の着装が義務付けられていて、更衣室での装着までは義務付けられておらずそこに保管されている状態で、作業着等での通勤に心理的抵抗があり、会社で作業着に着替える場合の時間は、一般的には労働時間と扱わなくてもいいと考えます。

売上成績が悪い社員を解雇できるか?

例えば、営業職として正社員を月給25万円で採用しました。

営業成績は上がらず、相対評価で1年間を通して常に下位15%以内でした。会社は、個別に指導はしていません。

会社は、1年後、就業規則の解雇規定「勤務成績が劣り、向上の見込みがないとき」を適用してその社員を”解雇”しました。

労使間で争いになった場合、”解雇”は認められるでしょうか?

労働契約法第16条(解雇)には、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、権利を濫用したものとして、無効とする。」となっています。

では、この社員の場合、「相対評価で下位15%以内」は、客観的に合理的な理由と認められるでしょうか?

その社員に指導したことがないのに、なぜ「向上の見込みがない」と言えるのでしょうか。

他のエリアを担当すれば、下位30%かもしれません。指導すればもっと上位の50%かもしれません。

過去の判例から

  • 就業規則に該当する解雇事由が規定されているか
  • 勤務成績の判断基準の妥当性
  • 同一事由による解雇者がいるか
  • 会社の指導・教育の有無、程度
  • 反省の機会の有無
  • 配置転換の余地の有無

等を基準に有効か無効かが判断されています。

キャリアアップ助成金のご紹介

有期雇用労働者、派遣労働者、パートタイマー等を正規雇用へ転換、人材育成、処遇改善等を実施した会社に対する助成金制度です。

助成コースは、以下の6つです。

  • 正規雇用等転換
  • 人材育成
  • 処遇改善
  • 健康管理
  • 短時間正社員
  • パート労働時間延長

支給額(中小企業)は、以下のとおりです。

  1. 有期⇒正規 1人あたり40万円
  2. 有期⇒無期 1人あたり20万円
  3. 無期⇒正規 1人あたり20万円

対象者が母子家庭の母、父子家庭の父の場合は、1人あたり上記1の場合10万円、2の場合5万円、3の場合5万円が加算されます。

今回は、正規雇用等転換コースの概略をご紹介します。

  1. キャリアアップ計画(3~5年)を作成し、北海道労働局長の認定を受けます。
  2. 就業規則等に「正社員への転換」等の規定が必要です。
  3. 転換する1ヵ月以上前に申請します。
  4. 転換して6ヵ月経過後、必要書類と一緒に支給申請します。

詳細は、以下をご覧ください。

http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/dl/careerup_pamphlet.pdf

 

高年法改正に伴う65歳の退職日をいつにしますか?

各企業は、高年齢者雇用安定法の改正により本年4月1日から原則として65歳まで従業員の雇用が義務づけられました。

それに合わせて就業規則の「定年等」の規定も見直しが必要になります。

では、就業規則の退職日をどのように規定しますか?

  • 退職日は、65歳に達した日とする。
  • 退職日は、65歳に達した日の属する月の末日とする。
  • 退職日は、65歳に達した日以後、最初に到達する3月31日とする。

民法では、「65歳に達した日」とは、「65歳の誕生日の前日」とみます。(第143条)

雇用保険法は、65歳に達した日に退職した場合は、それまで何十年勤務していたとしても「高年齢求職者給付金」(最高で基本手当の50日分)しか支給されません。

そのため通常考える失業時の基本手当(150日分、120日分あるいは90日分)を受給しようとする場合、65歳誕生日の前々日までに退職しなければなりません。

また、その時の退職理由が、「自己都合退職」になってしまうと、支給開始まで3か月待たなければなりません。

ひとつの案ですが、60歳以降1年ずつ契約更新をした場合、最後の年の契約は11カ月の契約期間とし、64歳11カ月で退職とします。

そうすれば契約期間満了による退職となり、さらに65歳の前々日の2つの要件がクリアされると考えます。

ハローワークの担当者は、どう判断してくれるでしょうか。

メンタルヘルス・マネジメント試験

これからの労務管理には、メンタルヘルス対策も重要と考え、3月に大阪商工会議所が主催する「メンタルヘルス・マネジメントⅡ種ラインケアコース(管理監督者)」を受験しました。

先日、合格通知が届いたのでこのブログに書き込むことにしました。

今回の試験は、Ⅱ種(会社の管理監督者向けの内容)で、部下が不調に陥らないように普段から配慮し、不調が見受けられた場合は、安全配慮義務に沿った対応を行なうことを目標にしています。

心の健康を損なってからの事後対策から心の健康問題の未然防止、さらに会社の組織的なケアの推進が主な内容です。

管理監督者が、部下のストレスに気付くポイントは、「いつもと違う様子に気付く」ことです。

たとえば、

  • 遅刻、早退、欠勤が増える
  • 休みの連絡がない
  • 残業、休日出勤が不釣り合いに増える
  • 仕事の能率が悪くなる
  • 思考力、判断力が低下する
  • 業務の結果がなかなか出てこない
  • 報告や相談、職場での会話が減ってくる
  • 表情に活気がなく、動作にも元気がない
  • 不自然な言動が目立つ
  • ミスや事故が目立つ
  • 衣服が乱れたり、不潔であったりする

これらのいつもと違う点は、他者との比較ではなく、本人の普段との変化を捉えることがポイントです。

Ⅰ種の試験は、経営者向けの内容になり、メンタルヘルスケア計画、社員への教育・研修等に関する企画・立案・実施が目標となります。

勉強し、受験するかはこれから考えます。

労働条件は、雇用契約と就業規則のどちらが優先?

先日、ある社長から次のような質問を受けました。

「当社では、労働時間を午前8時30分から午後5時30分、休憩時間1時間という労働条件で個別に雇用契約を締結しています。就業規則はありますが、10年以上前に作成したもので、午前9時から午後5時30分のままになっています。以前に、就業規則より個別の契約が優先すると聞いたことがあったので大丈夫と思っていました。最近採用した従業員から指摘され、不安になってきました。問題があるでしょうか?」

個別の雇用契約の労働時間は、8時間です。一方、就業規則の労働時間は、7時間30分です。いずれも労働基準法の範囲内です。

個別の雇用契約の条件が、就業規則より優遇されている場合には雇用契約が優先します。

今回の場合は、個別雇用契約の内容が就業規則に定める基準に達しないため、個別の契約は無効となり、就業規則が適用されます。(労働契約法第12条)

ちなみに、労働基準法の基準を下回った就業規則は、その部分は無効となり労働基準法が適用になります。(労働基準法第13条)

労働・社会保険料率の最新情報!

◇ 平成25年度の北海道地区健康保険料率が決定しました。

  • 健康保険料率 10.12%
  • 介護保険料率  1.55%

◇ 平成25年度の雇用保険料率は以下の通り(見込み)※前年度と同じ

  • 一般の事業      1.35%(労働者負担0.5% 事業主負担0.85%)
  • 農林水産・清酒製造業  1.55%(労働者負担0.6% 事業主負担0.95%)
  • 建設業        1.65%(労働者負担0.6% 事業主負担1.05%)

パートタイマーとの労働契約に関する法律が改正されます

パートタイマーとの労働契約に関する法律が昨年8月に改正され、平成25年4月1日より施行されます。(一部は施行済みです。)

今回の改正は、パートタイマー等の有期労働契約が多い会社では、対応を間違えると大きなトラブルに発展することが考えられますので注意が必要です。

改正点の一つ(最も影響が考えられるもの)は、契約を反復更新して5年経過し、6年目に入ってその従業員が、「ずっと働きたい。」あるいは「辞めたくない。」主旨の意思を示すと、その時点で従業員は「無期労働契約の申し込みをした」そして会社は「その申込を承諾したものとみなす」というものです。

無期労働契約とは、本人が辞めると申し出がなければずっと働き続けるということです。

今まで業務の繁閑あるいは賃金を抑制するためにパートタイマーを活用してきた会社はどうすればいいのでしょうか?

無期労働契約になった従業員から「働く時間も仕事も正社員と同じになったのに賃金に差があるのはおかしい。」という要求が出されたときどのように対応しますか?

こういう場合は、賃金、労働条件等は正社員と同じようにしなければならないのでしょうか?

今回、「雇止め・無期転換/継続雇用 法改正のポイントとトラブル対策」というテーマでセミナーを開催します。

  • 平成25年3月12日(火) 14:00~16:00
  • 札幌エルプラザ 4階(研修室5)
  • 受講料 1,000円/一人
  • 定員 15名

詳細な内容あるいは申込をご希望の方は、下記をプリントしてファックスでお申し込みください。

法改正のポイントとトラブル対策

書き込みは久しぶりです。

昨年後半から業務が集中していましたが、少し余裕ができましたのでまた書き込みをしていきたいと思います。

ちょっとしたきっかけで名刺交換をさせていただいた複数の経営者様から、「就業規則はあるけれどこのままでいいのか漠然と不安を持っている。」というご相談がありました。

採用時の注意点、勤務時間の管理、年休の与え方、従業員の勤務態度、退職手続の注意点等具体的な質問がありました。

この際、就業規則を見直そうということになり、今回お手伝いをさせていただいています。

他にも労務管理等で悩んでいらっしゃる経営者様は、まだいっぱいいらっしゃるでしょう。

御縁あってどこかでお会いできればうれしく思います。