親睦会代表者は労働者過半数代表者になれるか?

みなさん、こんにちは。

働き方改革関連法の施行に伴い、就業規則の改定が集中しています。

その中で、就業規則の意見書を求める労働者の代表や36協定の労働者代表に

ついて、「誰でもいいんでしょ?」と社長などから尋ねられます。

先日も2社から、立て続けに「就業規則の意見書の従業員代表者は、社内親睦会の

代表者を当てても問題はないか?」という質問がありました。

 

従業員過半数代表者の選出は、厚生労働省の通達(昭和56.6.23 基発355)で、

『過半数代表者の選出は、労働者の利益を保護するために行われるものであり、

選出が使用者の意向を反映したものであってはいけない』となっており、

具体的には、

  • 労働者を代表する者を、使用者が一方的に指名している場合
  • 親睦会の代表が、労働者の代表となる場合
  • 一定の役職者が自動的に労働者代表となることとされている場合
  • 一定の範囲の役職者が互選により、労働者代表を選出することとしている場合

などを例示しています。

 

過去には、以下の最高裁判決があります。

 

【トーコロ事件(最高裁平成13.3.22)】

 

会社は、役員を含む全従業員が加入する親睦団体の代表を36協定の代表として、

36協定を締結し所轄労働基準監督署に届出ていました。

ひとりの従業員が繁忙期に残業を拒否したため、会社は業務命令違反として

当該従業員を解雇しました。

裁判では、役員を含む全従業員が加入する親睦団体の代表者と締結した36協定は、

その代表者が労働者の過半数を代表する者とはいえないため、36協定自体を

無効としました。

よって、36協定を前提とする時間外労働命令も効力はなく、当該従業員の残業拒否

を業務命令違反とはいえず、解雇は無効と判断されました。

 

以上、参考になれば幸いです。

 

 

 

正規・非正規の格差是正に関する新聞記事を見て

みなさん、こんにちは。

大分サボっていましたが、久しぶりに書き込みます。

2018年6月に成立した働き方改革関連法は、大きく2つに分類できます。

一つは、長時間労働の是正、もう一つは正規・非正規労働者間の格差是正です。

関連法成立後は、長時間労働の是正に関係するご相談、例えば1カ月の残業時間の上限規制に関する相談や、年休5日付与義務の相談とそれらに関連する相談をお受けする機会が増えています。

そんななか私は、最近2つの新聞記事に注目しました。

1つは、「バイトに賞与なし 違法(大阪高裁)」(北海道新聞2019年2月16日付)です。

大阪医科大学の元アルバイト女性職員が、『正職員と同じ仕事なのに賞与がなく待遇格差は違法』と訴えた裁判で、大阪高裁は109万円の支払いを命じました。

もう1つは、「非正規に退職金認める(東京高裁)」(北海道新聞2019年2月21日付)です。

東京メトロの子会社で働いていた契約社員4名のうち、10年前後勤務していた2名の従業員に、それぞれ45万~49万円の退職金を支払うよう命じました。

いずれも、正規・非正規労働者間の待遇格差の是正、いわゆる「同一労働同一賃金」に係る裁判です。今後、最高裁まで争われるかどうかは不明ですが、今回の判決は、昨年の「長澤運輸事件」、「ハマキョウレックス事件」の最高裁判決を踏襲したものと私は考えます。

正規・非正規の待遇格差是正に関する改正施行は来年4月(大企業)ですが、日本通運は1年先取りして今年4月から非正規社員6000人に給与を引き上げ、正社員と同水準にすると発表しました(日本経済新聞2019年2月23日付)。

日通は今回の対応について、「正規・非正規の格差是正と同時に、人材確保や社員の意欲的に働く動機づけにつながる」と考えています。

中小企業に対する施行日は2年後ですが、2年なんかあっという間にきます。なぜなら、今年はもう2カ月が過ぎたのですから‥。

さて、みなさん、なにから準備をはじめますか?

 

 

 

厚生労働省 過重労働解消キャンペーン実施!

みなさん、こんにちは。

平成28年6月に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」において「長時間労働の是正に向けた法規制の執行強化」が盛り込まれるなど政府も対策に取り組んできましたが、先日また大手広告代理店の入社間もない若い女性従業員が、長時間労働が原因による過労自殺で亡くなっていたことが報道されました。

厚生労働省は、「過労死等防止啓発月間」の一環として「過重労働解消キャンペーン」を11月に実施し、長時間労働の削減等過重労働解消に向けた周知・啓発等の取組を実施しています。(実施期間 平成28年11月1日~11月30日)

主な実施事項は、

1.労使の主体的な取り組みを促す

使用者者団体や労働組合に対し、長時間労働削減に向けた取組に関する周知・啓発などの実施について、厚生労働大臣名による協力要請を行い、労使の主体的な取り組みを促す。

2.労働局長によるベストプラクティス企業への職場訪問を実施

都道府県労働局長が長時間労働削減に向けた積極的な取組を行っている企業を訪問し、取組事例を報道等により地域に紹介する。

3.重点監督を実施

(1)監督の対象とする事業場等

・長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場等

・労働基準監督署及びハローワークに寄せられた相談等を端緒に、離職率が極端に高いなど若者の「使い捨て」が疑われる企業等

(2)重点的に確認する事項

・時間外・休日労働が36協定の範囲であるかについて確認し、法違反が認められた場合は是正指導

・賃金不払残業がないかについて確認し、法違反が認められた場合は是正指導

・不適切な労働時間管理については、労働時間を適正に把握するよう指導

・長時間労働者については、医師による面接指導等、健康確保措置が確実に講じられるよう指導

(3)書類送検

・重大・悪質な違反が確認された場合は、送検し公表

4.電話相談を実施

フリーダイヤルによる全国一斉の「過重労働解消相談ダイヤル」を実施し、担当者が相談に対する指導・助言を行う。

(フリーダイヤル 0120-794-713)

平成28年11月6日(日)9:00~17:00

『過重労働解消のためのセミナー』が全国各地で実施しています。

関心のある方は下記をご確認ください。

http://partner.lec-jp.com/ti/overwork/

以上です。

 

 

経営労務診断を受けませんか?

みなさん、こんにちは。

今回は、経営労務診断についてお話したいと思います。

経営労務診断とは、自社の経営労務に関してきちんと管理できているか第三者である社会保険労務士のチェックを受け、改善点があれば見直しを行い、最終的に適切な経営労務管理を実施している企業であることを証明するシール『経営労務診断適合企業』を貼ってホームページに掲載しWebサイトに公開します。

この診断を受けることによって、会社は雇用管理の意識向上と同時に適切な経営労務管理に取り組んでいる会社であることを社内外にアピールでき、そこで働く従業員の動機づけにもつながります。

例えば、ビジネス取引相手を探している会社がひとつのホームページを見つけ、しっかり法令順守している企業であることが分かれば安心して取引条件のお話ができるはずです。

また従業員を募集する際、募集していることを知った応募者がホームページを見たときに他に判断基準がなければ「安心して働ける会社」として最優先に検討してもらえるはずです。

主な診断項目(必須)は、

1.法定帳簿

  • 労働者名簿
  • 賃金台帳

2.人事労務関連規程

  • 就業規則
  • 労働条件関連規程
  • 賃金関連規程
  • 育児・介護休業関連規程

3.人事労務管理データ

  • 労働時間管理
  • 健康診断管理
  • ハラスメント相談・対応記録

4.社会保険・労働保険

  • 社会保険の加入
  • 労働保険の加入

5.従業員情報

  • 全従業員数
  • 正規雇用者数
  • 全従業員に対する正規雇用者数の割合

その他任意項目として

  • 正規従業員の平均年齢
  • 正規従業員の平均年収
  • 正規従業員の年間平均労働時間数
  • 正規従業員の平均勤続年数

等々があります。

具体的に私が昨年から診断を実施し、今春掲載しました『富士ライフサポート株式会社』様のホームページをご紹介します。http://fuji-dg.jp/

このホームページ自体大変工夫されていますが、なかでも求人情報のページは、まさに同業他社と差別化されたページになっていると思います。

募集を知りホームページを確認した応募者は、このホームページから職場の雰囲気を感じ取ることが出来ると思います。

この経営労務診断は、JIPDEC(一般社団法人日本情報経済社会推進協会)が運営するROBINS(サイバー法人台帳)が情報管理を行っています。

JIPDEC http://www.jipdec.or.jp/

ROBINS https://robins.jipdec.or.jp/robins/index.jsp

働きやすい職場環境づくりを構築し、業務拡大に繋げていこうとお考えの事業者様は、是非 ”経営労務診断” をご検討してはいかがでしょうか。

 

 

セクハラ、パワハラの定義!

みなさん、こんにちは。

先日、セクハラ、パワハラについて相談を受けました。

まず、”セクハラ” の具体的な例として

  1. 容姿や身体の特徴に関して不必要な発言をすること
  2. 性的あるいは身体に関して不必要な質問をすること
  3. 猥褻図画を見たり、配布したり、掲示すること
  4. うわさを流すこと
  5. 必要のない身体への接触
  6. プライバシーの侵害
  7. 性的な言動によって、他の従業員の就業意欲を低下させること
  8. 交際・性的関係の強要
  9. 性的な言動への抗議や拒否したことに対して、解雇、不当な配置転換等を行うこと
  10. その他相手が不快に感じる行為

これらの行為は、職場内に限らず、職場の延長とみなされる場所、例えば業務終了後の食事会などでの行為も含まれます。

会社は、被害を受けた、あるいは受ける恐れがある従業員のために相談や苦情を申し立てる 「相談窓口」 を設置する必要があります。

相談を受ける際には、本人のプライバシー等に十分配慮しなければなりません。

次に、”パワハラ” の具体的な例として

  1. 人格を傷つけるような暴言や暴力
  2. 法令違反の行為を強要すること
  3. 仕事上のミスをしつこく責め続けること
  4. 大勢の従業員の見ている前で責め続けたり、恫喝すること
  5. 大声で怒鳴ったり、机をたたいたりすること
  6. 仕事を与えなかったり、意図的に情報や連絡を与えないこと(無視すること)
  7. 能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じること
  8. 仕事に関係のないプライベートな用事を押し付けること
  9. 人格を傷つけるようなうわさを広めること
  10. 私物を意図的に壊したり隠したりすること(嫌がらせ行為)
  11. 権限がないのに異動や退職の強要、解雇をちらつかせること
  12. その他上記に準ずる行為

これらの行為は、上司に限らず、先輩後輩の関係、同僚・部下でも本人に対して影響力を持つ場合なども含みます。

セクハラと同様、会社は被害を受けた、あるいは受ける恐れがある従業員のために相談や苦情を申し立てる 「相談窓口」 を設置する必要があります。

相談を受ける際には、本人のプライバシー等に十分配慮しなければなりません。

 

 

「いじめ・嫌がらせ」が3年連続トップ!

先月、厚生労働省から「平成26年度個別労働紛争解決制度の施行状況」が発表されました。

内容のポイントは、

1.総合労働相談件数、助言・指導申出件数、あっせん申請件数のいずれも前年度と比べ減少。

  • 総合労働相談件数          1,033,047件(前年度比 1.6%減)
  • そのうち民事上の個別労働紛争相談件数 238,806件( 同   2.8%減)
  • 助言・指導申出件数           9,471件( 同   5.5%減)
  • あっせん申請件数            5,010件( 同    12.3%減)
  • 全国的に減少傾向にあるものの、総合労働相談件数は7年連続で100万件を超えるなど高止まり。

 

2.民事上の個別労働紛争の相談内容は、「いじめ・嫌がらせ」が3年連続トップ。

  • 「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数は62,191件(前年59,197件)で3年連続トップ、助言・指導の申出は1,955件(前年2,046件)で2年連続トップ、あっせんの申請は1,473件(前年1,474件)で初めてトップです。

 

3.助言・指導、あっせんともに迅速な処理

  • 助言・指導は1か月以内に97.3%、あっせんは2ヵ月以内に92.0%を処理しています。

 

個別労働紛争相談の内訳としては、「いじめ・嫌がらせ」が62,191件(21.4%)、「解雇」が38,966件(13.4%)、「自己都合退職」が34,626件(11.9%)と多くなっています。

相談者は、労働者(求職者を含む)が195,198件(81.7%)、と大半を占めており、事業主からの相談は24,766件(10.4%)でした。

相談対象の労働者の就労形態は、「正社員」が91,111件(38.2%)、「パート・アルバイト」が38,583件(16.2%)、「期間契約社員」が26,128%(10.9%)、「派遣労働者」が10,399件(4.4%)となっています。

 

【助言・指導の例】

事例1:いじめ・嫌がらせ

(事案の概要)

申出人はミスをすると上司から怒鳴られていた。会社の人事課に相談したところ、人事課は申出人の上司を指導したが、上司は申出人に仕事を与えなくなり、申出人が何らかの仕事をしていると、「仕事をするな。」と言って怒るようになった。精神的に耐えられないので、上司の接し方に改善を求めたいとして助言・指導を申し出たもの。

(助言・指導の内容・結果)

  • 事業主に対し、パワーハラスメントの提言で示されている類型(5)仕事を与えないことについて説明し、申出人の上司の行為がパワーハラスメントに該当する可能性があり、会社の責任が問われる可能性があることから、注意する等の対応を行なうよう助言した。
  • 人事課が、再度申出人の上司を指導し、上司は申出人への接し方を改善した。

 

事例2:解雇に関する助言・指導

(事案の概要)

申出人はパート社員として勤務していたが、習い事を始め、休みを増やしてほしいと事業主に申し出たところ、「今月末付で辞めてもらいたい。」と言われた。今、辞めさせられると困るため、解雇を撤回してほしいとして助言・指導を申し出たもの。

(助言・指導の内容・結果)

  • 事業主に対し、解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は無効となることを説明し、申出人と話し合う等の対応をとるよう助言した。
  • 助言に基づき、紛争当事者間で話し合いが行われ、申出人の雇用継続が認められた。

 

事例3:自己都合退職に係る助言・指導

(事案の概要)

申出人は、正社員として勤務していたが、ある月のある日に、1か月後の日付で退職を申し出たところ、申出人は会社に必要な人物であることを理由に「退職は認められない」と退職を拒否された。次の就職先がきまりそうなので、何とか円満に退職したいとして、助言・指導を申し出たもの。

(助言・指導の内容・結果)

  • ・事業主に対して、雇用は、解約の申入れの日から2週間経過することによって終了するという民法第627条第1項について説明し、申出人と話し合うよう助言した。
  • 助言に基づき、紛争当事者間で話し合いが行われ、紛争当事者間で納得したうえで、申出人は2か月後の日付で退職することになった。

 

【あっせんの例】

事例1:いじめ・嫌がらせに係るあっせん

(事案の概要)

申請人は、店長から、日常的に「バカ」「お前」などと言われ、精神的苦痛を感じており、店長に改善を求めて抗議したものの、店長は全く聞く耳を持たず、退職に追い込まれた。このため、精神的損失を被ったことに対する補償として、50万円の支払いを求めたいとしてあっせんを申請した。

(あっせんのポイント・結果)

  • あっせん委員が双方の主張を聞いたところ、被申請人は「バカ」や「お前」などと言った発言は冗談であるとしていじめ・嫌がらせの事実を認めなかったものの、問題を解決するために、解決金として5万円を支払う考えを示した。
  • 申請人は提示された解決金額について同意したため、解決金として5万円を支払うことで合意が成立し、解決した。

 

事例2:解雇に係るあっせん

(事案の概要)

申請人は、正社員として勤務していたが、社長から、「仕事に対するやる気が見えない。」と言われ、解雇を通告された。事前に注意や指導がなく、いきなり解雇されたため、納得がいかない。このため、経済的・精神的損失に対する補償金として、100万円の支払いを求めたいとしてあっせんを申請した。

(あっせんのポイント・結果)

  • あっせん委員が双方の主張を聞いたところ、被申請人は、解雇予告手当を支払ったと主張したものの、あっせん委員の調整の結果、解決金として40万円支払う考えを示した。
  • 申請人は提示された解決金額について同意したため、解雇予告手当とは別に解決金として40万円を支払うことで合意が成立し、解決した。

 

事例3:雇止めに係るあっせん

(事案の概要)

申請人は半年ないし1年の期間契約を反復更新して勤務していたが、「総合的に判断した結果、次期契約を更新しない」として、雇止めされて退職した。雇止めに納得がいかないので、復職を求めるとともに、復職ができないのであれば、経済的・精神的損失に対する補償金として、30万円の支払いを求めたいとしてあっせんを申請した。

(あっせんのポイント・結果)

  • あっせん委員が双方の主張を聞き、被申請人に対し、解決の方向性を確認したところ、被申請人は申請人の復職には応じられないが、解決金として10万円を支払う考えを示した。
  • これを受けて、申請人に対し、解決のために金額の譲歩の考えを確認したところ、15万円程度であれば可能である旨考えが示された。
  • あっせん委員が、再度、被申請人に解決のための譲歩を促したところ、被申請人は申請人が提示した解決金額について同意したため、解決金として15万円支払うことで合意が成立し、解決した。

 

以上、それぞれ3例ずつ紹介しました。

”セクハラ”訴訟で最高裁判決!

大阪の水族館で発生したセクハラ問題で2015年3月26日、最高裁が判決を下しました。

まず、経緯から(産経新聞抜粋)

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大阪市港区の第3セクターの水族館「海遊館」が、男性管理職2人に対し女性への「性的言動」を「セクハラ発言」と認定して出勤停止とした処分の可否が争われた訴訟の上告審判決が26日、最高裁第1小法廷(金築(かねつき)誠志(せいし)裁判長)であった。

同小法廷は、重すぎるとして処分を無効にした2審大阪高裁判決を破棄し、「処分は妥当だった」と海遊館側の逆転勝訴を言い渡した。

男女雇用機会均等法は職場での「性的言動」の防止を義務づけており、企業は同法や厚生労働省の指針に基づきセクハラの処分をしている。最高裁の判断は企業の対応に影響を与えそうだ。

1,2審判決によると、課長代理だった40代の男性2人は派遣社員の女性らに「俺の性欲は年々増すねん」、「夜の仕事とかせえへんのか」などと性的な発言を繰り返したとして、平成24年2月、それぞれ出勤停止30日間と10日間の懲戒処分を受け、降格された。

男性側は、「出勤停止は懲戒解雇に次いで重い処分。事前の注意や警告をしないで処分したことは不当だ。」として提訴した。

1審大阪地裁は、発言内容が就業規則で禁止されたセクハラに当たると認定し、「上司であるのに、弱い立場にある女性従業員らに強い不快感を与える発言を繰り返し、セクハラ行為をしたことは悪質だ」として処分が有効と判断。男性側の訴えを棄却した。

しかし2審は、「セクハラ行為が軽微とは言えないが、事前の警告がない重い処分で酷だ」として、男性側の逆転勝訴としていた。

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ここでポイントは、水族館を運営する会社が、『職場のセクハラ防止を重要な課題として対策に取り組んでいた』ということです。

”就業規則”で禁止行為を具体的に項目を掲げ、従業員には行為の程度によって懲戒処分を行なうことを『文書で周知』していました。

今回の件は、発言した者にとっては『何気ない言葉』のつもりでも、”セクハラ”として重い懲戒処分の対象になり得ることを警告していると思います。

社員3人の会社の事件!

これは社員3名を雇用しているソウト開発会社の代表(X氏)から伺った話です。

事業を始めて5~6年の会社ですが、家族的な職場の雰囲気を大事にしていました。

業績が伸びて業務も忙しくなったため、一人の正社員(Aさん)を中途採用しました。数か月経過したころからAさんは、業務中仕事に集中せず、ボーッとしているようになりました。注意しても直らないので、病院に行くよう勧めました。

病院の診断書は、うつ病でした。X氏は、Aさんと今後のことをいろいろ話し合い「仕事を辞めてきちんと病気を治したほうがいい。」という話をしました。Aさんも「じゃ、辞めます。」と返事をしました。X氏は退職の手続きをすませ、すべて終わったと思っていました。

この件についてほとんど忘れて忙しく業務をこなしていたX氏に、半年ほどたったある日、弁護士から一通の書類が送られてきました。

内容は、Aさんの代理人として「不当解雇に対する精神的損害賠償として、600万円を請求する。」ものでした。

家族的な職場の雰囲気を大事にしていたX氏は、Aさんを無理に辞めさせたつもりはなく、話し合いの上で、Aさんの体を気遣い、退職を勧めたつもりでいました。(当然労働基準法の知識はありません。)

この事件は、労働審判に持ち込まれ最終的に金銭的和解で合意しました。

X氏は、なぜこのようなことになったのかを考えていました。そんな矢先、次の事件が起きました。

別の社員(Bさん)がある日、出社せず連絡も取れなくなりました。無断欠勤です。3日目にようやく連絡が取れたBさんは、「体が重くてずっと寝ていた。」とのことでした。

家族的雰囲気の職場を重視するX氏は、翌日出社したBさんに無断欠勤を注意し、この間の仕事を取り戻すよう促しました。

問題発生はこの後です。

この様子を見ていた他の社員(Cさん)が、「無断欠勤をしたのに、なぜ処分をしないのか。」と不満を口にしました。「休んだ分の仕事をすぐ取り戻せばいいという問題ではない。そういうことであればみんな勝手に休むようになる。」という主張です。

X氏はCさんの意見に反論できませんでした。しかし、Bさんを処分もできませんでした。なぜなら社内に処分するルールを作っていなかったからです。

ルールがないまま処分すれば、その時の気分や相手によって処分内容が変わり、それも問題発生の一因になります。

X氏は多くの人に悩みを打ち明け、相談し、最終的にAさんの件から休職・復職・退職、Bさんの件から服務規律を念頭に社内ルール【就業規則】を作成しました。家庭的な職場の雰囲気は壊さないように心掛けたうえで指導を受けながら運用を考えています。

皆さんは、この会社は社員に恵まれない運の悪い会社だと思いますか。

それとも、十分あり得る問題だと考えますか。