みなさん、こんにちは。
今回は、”会社のリーダー”、”人材育成” を考えるうえで私自身大変共感できた本、『奇跡の職場』 (矢部 輝夫氏著 あさ出版)をご紹介したいと思います。
この本に書かれている会社は、矢部氏が在籍し経営に携わった『株式会社JR東日本テクノハートTESSEI(通称テッセイ)』(旧社名「鉄道整備株式会社」)です。
この会社は、東北新幹線、上越新幹線の車内清掃を担当する会社ですが、これまでの取組がマスコミなどに取り上げられるようになり、いまではオリエンタルランドや東大の学生が見学に来るほか、ハーバード大学ビジネススクールの教材として注目されている会社です。
ここでは、はじめのプロローグの一部をご紹介します。
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「普通の人たち」がつくる強い現場
ここまで読まれて「テッセイには優秀な人材が揃っているんだな」と思われたかもしれませんが、テッセイにいるのはごく普通の人たちです。積極的に応募してくれる人もまずいない、どちらかといえば誰もやりたがらない仕事でした。
そんな仕事に対してやる気を出してもらうために私が考えたのは、現場で働く人に仕事への「誇り」と「生きがい」を持ってもらうこと。「自分はこういう仕事をしているんだ」と堂々と語れるような自信や誇りが身につき、仕事を生きがいにしてもらえば、それは間違いなく組織の強さにもつながっていくと思ったからです。
では、そのために経営者はどうしたらいいのか?その問いに対する私の答えは、スタッフを「認める」こと。そして経営者がスタッフを、スタッフがスタッフ同士を、互いに認め合うことのできる環境、風土、仕組みをつくることです。そう確信していたからこそ、その点だけは強く意識してきました。
本書でご紹介していく、目立たなくとも現場でコツコツと頑張っている人の努力を評価し、みんなに見えるようにほめるシステム。「ほめられることによってさらに伸びる」という好循環を生み出すことになったのです。
そんなことも含め、私は「スタッフに対するおもてなし」こそが経営者の仕事なのではないだろうかと考えています。なぜなら人間は、自分がされて気持ちよかった、うれしかったことはほかの人にしてあげたくなるものだから。
つまり、日々の仕事の努力を正当に評価され、「大切にしてもらえた」という気持ちを持つことができれば、それは自然に「お客様をおもてなししたい」という気持ちにつながっていくわけです。
テッセイで働くスタッフたちは、大半がさまざまな人生経験を経た末にここにたどり着いています。過去の職場では、一生懸命やっても評価されたことが一度もなかったという人も少なくありません。
だとしたらなおさら、尊重し、評価することには大きな意味と価値がある。それこそが、テッセイの根底にある考え方なのです。
鉄道マンとして長年働いてきた私がテッセイに入社したとき、この会社では本社主導の現場を「管理」する体制が貫かれていました。しかしそれでは、現場のモチベーションが下がって当然です。
そう感じたからこそ、本社が主導するのは人事などの制度や投資だけにとどめ、あとは現場でどんどんやってもらうという発想に切り替えようと考えました。企業にとって何より大切なのは改善です。改善で成果をあげられるからこそ、生き残れると言っても過言ではありません。
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最初は何も希望を持ち合わせていなかったスタッフの多くは、テッセイで劇的に変化しました。私が変えたのではありません。彼ら彼女らがもともと持ち合わせていた仕事に対する自分の思いを率直に語り、実践し始めたのです。
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著者である矢部輝夫氏は、本文で下記のような本音も記されています。
私はもともと安全管理を専門として、「安全一筋」でやってきた人間なのです。現場一辺倒の泥臭い経歴かもしれません。でも手前味噌ながら、そんな自分もそれなりのことをしてきたという自負はあったのです。
だからこそ、まったく仕事が異なるテッセイに異動が決ったときには、強い違和感を覚えたというわけです。
それに当時のテッセイは、仕事内容の地味さ、大変さに加えて、率直に言ってあまり評判の良くない会社でした。事故やお客様からのクレームも多く、働いている人も進んでその仕事をしたいと思っているようには感じられなかったからです。
「あんなところへ行くのか・・・」
正直なところ、そんな気分でした。
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こんな気持ちで入社した人が、どのようにして会社を変えていったのか興味がわいてきませんか?
以上です。