白井コーチの指導法!

まず多くの方が「”白井コーチ”ってだれ?」と思われたかもしれません。

”白井コーチ”とは、日本ハムファイターズでコーチをされている白井一幸氏です。

先日、ある大学(母校ではありません。)のOB会が主催する講演会のご案内と参加のお誘いをいただきました。

白井コーチが、その大学のOB会で講演をすることになった経緯や、私がお誘いをいただけることになったきっかけについてはここでは省略して、講演で話をされた内容を一部ご紹介したいと思います。

みなさんご存知の通り日本のプロ野球は12球団ありますが、チーム力や練習内容にほとんど差はないそうです。

そうしたなかで、チームが”日本一”になるためには、「選手の実力」と「チームワーク」と「運」の三つが必要だと話をされました。

日本ハムは、80~90年代は常に最下位争いをしていたチーム(白井コーチのことばです。)でしたが、北海道に移転してから常勝軍団(移転後パ・リーグ4度の優勝と1回の日本一)と言われるようになりました。

しかし、そうなれたのにはそれなりの理由があります。

日本ハムは、改めて球団として『日本一になること!』を目標に持ったことです。

しかし、これって当然のことではないでしょうか?
”日本一”を目指していない球団があるでしょうか?

ふつう二軍の選手やレギュラーに定着できない選手に目標を聞くと、「早く一軍でプレーすることです。」あるいは「一軍のレギュラーを掴むことです。」などと答えます。

日本ハムの場合は、”日本一”を最大の目標に掲げるわけですから、社長をはじめ球団職員、選手、そして二軍選手にも個人の目標よりも”チームの日本一”を目標にするように指導しています。

日本ハムがあえて『日本一』を意識させる目的は、”チームワーク”を構築するためです。

そこには、個人のプレー、成績よりも選手一人ひとりが「優勝したい!」と願い、それを思いながら練習を積み重ねたとき、そこからチームプレーが生まれてくると考えるからです。

 
”球団の目標”は、一般企業で例えるならば”会社の経営理念”と同じです。
経営理念は、会社の目的・目標です。

皆さんの会社では従業員(新入社員も含めて)に対して、”経営理念”いわゆる会社の目指す目的・目標をきちんと説明して理解し共有されているでしょうか?

もし、理念が共有されていないとしたら、従業員はそれぞれ自分勝手に仕事をすすめ、結局チームワークのないバラバラな職場でしかありません。

 
次に練習についてです。

二軍の練習では、例えば30メートル走を全力でやらせると二つのタイプに分かれるといいます。

Aタイプは、課せられた30メートルを全力で走る選手。
Bタイプは、スタートダッシュは力を抜き、途中10メートルほどは全力で走るが残り数メートルは流して走る選手。Bタイプはどちらかというと少し有名で実績もそこそこ出してきた選手に多いそうです。

白井コーチは、二軍監督のときBタイプの選手は試合に出場させません。すると、選手から「あいつよりうまい自分をなぜ出さないのか?」と文句を言ってきます。

そのとき白井コーチは、次のように言うそうです。
「お前は、試合に出たかったのか?てっきり試合に出たくないとばかり思っていた。出たくないからあんな(手を抜いた)練習をしてきたんだろう!試合に出たいのなら練習に向き合う考え方を変えないと(出たいという気持ちが)オレに伝わってこないなぁ」

「当たり前のことを当たり前に実践する」そのことの大切さを選手に教えます。

その後は、本人は一生懸命練習に取り組むそうです。

「結果(試合に出たい)を得るためには、行動(練習)を変えなさい、行動を変えるためには心(考え方)を変えなさい。」ということを指導します。

これを聞いたとき私は、ある言葉を思い出しました。

行動が変われば、習慣が変わる
習慣が変われば、人格が変わる
人格が変われば、運命が変わる
(アメリカの心理学者の言葉と記憶しています。)

 
さらに選手への指導方法です。

例えば、試合でエラーした選手に対しての指導の仕方です。

選手が試合でエラーをしたときベンチにいるコーチの多くは、
その選手を睨み付け、チェンジでベンチに戻ってくると「なぜ、エラーしたんだ?」と叱り、試合が終わった後には「エラーしたのは、これが原因だ。」と教え、「これから1時間練習するぞ!」と練習をさせる。

つまり、「叱って」「教えて」「練習させる」

多くのコーチは、これが”コーチの仕事”と考えてこれを繰り返します。
確かに周りから見ると一生懸命指導しているように見えます。

しかしこの場合、エラーした選手本人はどう受け止めているでしょうか?

グランドでは、「エラーした。しまった、また怒られる。」
ベンチに戻りコーチから言われると”ハイ・イイエ”と返事をしながら心の中では「そんなことは前から言われているから分かっているんだけどなぁ。」
試合後は、「また練習かぁ。疲れているのになぁ。」

このような気持ちで練習しても選手は上達するでしょうか?

こういうとき白井コーチの指導は、エラーした選手にグランド上では
下を向かずに、より大きな声を出させるそうです。

チェンジでベンチに戻ってきたら、その選手にチームの為に自分が次に何をすべきかを考えさせます。
そして試合終了後は、なぜエラーしたのか、エラーをしないためにはどのような練習が必要かを本人に考えさせます。

この”考えさせる”ための質問が、いわゆる”オープン・クエスチョン”という仕法です。

『エラーした原因はどこにあったと思うか?』
『どうすればよかったと思うか?』
『何が足りないと思うか?』
『どういう練習が必要だと思うか?』

お気づきだと思いますが、これらの質問は、”YES/NO”では答えられません。

全部自分で答えを考えなくてはなりません。

これを繰り返すことで選手自身に”気づき”が生まれ、結果として、試合後同じ1時間の練習をすることになったとしても気持ちが違うため、練習の成果が全く違うということです。

つまり、”やらされる”のではなく”自分のために必要だからやる”と気づくことが大切なのです。

まさに、『ティーチング』ではなく『コーチィング』です。

多くの場合、「”コーチ”しているつもりが”ティーチ”になっている。」と白井コーチはおっしゃっていました。

従業員を育成するとき、その従業員を”やる気”にさせる指導方法とはどのようにすればいいのか参考になる話ではないでしょうか。

「マイナンバー制度」の準備は始めていますか?

「マイナンバー制度」というキーワードは、聞いたことがあると思いますが、多くの皆さんは「まだ先のこと!」と思われているのではないでしょうか?

今回は、「マイナンバー制度」について簡単に説明します。

法律の正式な名前は、『行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律』といい、一般的に『番号法』と言われます。

この制度は、2015年10月から(もう1年を切っています。)『通知カード』により、国民一人一人に番号が通知されます。

通知カードには、氏名、住所、生年月日、性別、マイナンバーが記載されます。

2016年1月から、『個人番号カード』の交付がスタートします。

個人番号カードには、氏名、住所、生年月日、性別、写真(以上表面)、マイナンバー(裏面)が記載されます。

個人番号カードは、通知カードを市町村役場に持参して交付を受けることにより取得できますが義務ではありません。

個人番号カードは、写真がつきますので身分証明書として利用することができます。

「マイナンバー制度」は、”社会保障、税制度の効率性・透明性を高め、公平・公正な社会を実現する『社会インフラ』である”というのが導入の趣旨です。

 

具体的には、

  • 所得を正確に把握して、社会保障や税の公平化を図る
  • 本当に困っている人に手を差し伸べる
  • 大災害などで困っている人に支援の手を差し伸べる

ことに活用することが考えられています。

マイナンバー制度がスタートすると私たちは、

  • 行政への届出・手続の際に、マイナンバーも一緒に届出る
  • 勤務先、銀行等の金融機関にマイナンバーを届出て手続をしてもらう

ようになります。

また、マイナンバーを扱う機関は、

  • マイナンバー及び情報管理の取り扱いを慎重にしなければならず
  • マイナンバー及び付随する情報の漏洩、滅失等が発生した場合には処罰される

こともあります。

 

マイナンバー(個人番号)は、日本に住所を有する者(外国人も含みます。)すべてに一つの番号が付けられます。

付けられた番号は、原則として生涯変更はありません。ただし、不正利用された場合は変更になります。

マイナンバーは、12桁で総務省が所管します。

(同時に、法人にも国税庁が所管する13桁の『法人番号』が付けられます。)

マイナンバーを何に利用するかは、法律で制限されています。利用できる範囲は、以下の3分野だけです。

〇 社会保障分野

  • 国民年金、厚生年金保険等の資格取得、年金給付を受けるとき
  • 雇用保険の資格取得、失業等の給付を受けるとき
  • ハローワークへの届出事務のとき
  • 健康保険の資格取得、給付を受けるとき
  • その他認められる範囲

〇 税分野

〇 防災分野

これら以外の行政分野や民間同士でのサービスの利用に活用することは、現在認められておらず、施行後3年を目途に利用範囲を見直すことになっています。

 

しかし、当然のことながら私たち国民は、この制度に不安を憶えます。

何に不安を感じるかといいますと、

  • マイナンバー(個人番号)から集積・集約された個人情報が外部に漏洩するのではないか?
  • 他人の成りすまし等によって不正利用され、知らない間に財産が失われるのではないか?
  • 国家によって個人情報が名寄せ、突合せされて一元管理されるのではないか?

などです。

これらに不安に対する保護対策として

〇 個人情報は各行政機関が保有し『分散管理』する

つまり、個人番号やそれに付随する個人情報(特定個人情報)は、一か所に集められて管理されることはなく、各機関がそれぞれ保有し、必要な時に必要な情報を保有している機関に照会することになっています。

〇 「特定個人情報保護委員会」を設置する

この委員会は、公正取引委員会と同様に高い独立性を持っており、マイナンバーの管理が適切に行われているか監視し、必要に応じて立ち入り検査や資料提出要求ができます。不適切な時は、指導・助言・勧告・命令ができ、従わないときは罰せられることがあります。

〇 「マイ・ポータル」の設置

自分の特定個人情報をいつ、だれが、なぜ情報提供したかをインターネットを通じて確認できるシステムを制度開始後1年を目途に開発する予定になっています。

〇 罰則の強化

一番重い罰則は、「個人情報に関わる業務に従事する者が、故意に特定個人情報ファイルを漏洩した場合は、4年以下の懲役又は200万円以下の罰金」に処せられます。

 

制度がスタートした後に企業がしなければならない業務は、全従業員(パートやアルバイトも含めて)から個人番号を提供してもらうことです。その際、提供された個人番号が本人と間違いないか確認することが最も重要な課題です。

さらに、記載すべき帳票・書類等に当人の個人番号と違う番号を付記してしまうと、その個人情報は別人に張り付くことになりますので複数のチェックが必要です。

また、支店・営業所のある会社、多店舗展開している会社は、そこで働く従業員の個人番号を収集する際、本社の担当者が出向いて行なうのか、現地の責任者が行なうのか、現地の責任者が行なう場合の情報管理はどのようにするのか等を事前に決めておかなければなりません。

この制度がスタートすると誰しもが不慣れのため混乱も予想されます。その時の対応を考えておく必要もあります。

 

制度スタート直後の混乱を最小限にする為に、会社が制度スタートの前に準備することは、

  • 社内に個人番号対策チーム結成し、その責任者と担当者を決定する
  • 個人番号取扱対象業務を整理し明確にする
  • 個人番号取扱業務担当者を明確にする
  • 社内システムの変更が必要か否か判断する
  • 社内規定(規程)の見直し、取扱マニュアル等を作成する
  • 従業員に制度の説明と、取扱業務担当者への教育・研修を実施する

が考えられます。

まだ、ガイドラインの細部については発表になっていません。現在意見募集を行い、年内を目途に予定されています。

こうして考えますと『マイナンバー制度』は、スタートするまでそれほど時間があるとはいえません。

すべきことはいっぱいあります。

今から少しずつ、情報を収集し、できるところから対策を準備されることをお勧めします。

参考資料は、こちらをご覧ください。

(内閣府 社会保障・税番号制度)

http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/bangoseido/

パートタイマーの無期契約転換への注意点!

昨年の労働契約法改正で、パートタイマーが平成25年度以降契約更新を繰り返し、5年を経過した後、無期契約へ転換を希望した場合の対策について、先日改めてご相談を受けました。

この場合、まず必要なことは、就業規則の見直しをすることです。

 

1.会社が無期転換を考えていない場合

重要なのは、最初(平成25年度以降)の労働契約時に、「契約更新は4回を限度とすること」を明確に書いておくことです。

さらに、毎年契約更新するごとに、「残り〇年です。」ということを確認し、無期契約の可能性がないことをその都度伝え、余計な期待を持たれないようにすることです。

 

2.会社が無期転換を考えている場合

会社は、有期パートタイマーと無期パートタイマーの定義を明確にします。

パートタイマーが5年経過後、希望する場合は無期転換の申込みができることを書きます。

また、無期転換後の労働条件(転換前の労働条件と同一でも構いません)や転換に関する手続等も書いておきます。

さらに、無期パートタイマーの定年を決めておいた方がいいと思います。

 

3.不合理な労働条件の禁止

有期契約社員と無期契約社員とで、労働条件に差があることを禁止しているわけではなく、合理的な理由がなく差を設けることを禁止しているということです。

不合理かどうかは、以下の事情等を考慮して判断します。

  • 職務の内容(業務内容、それに伴う責任の程度)=(例)クレーム処理
  • 人材活用方法(人事異動の有無やその範囲)=(例)転勤の有無
  • その他「期間の定めがあること」により異なる労働条件とすることが、社会通念上認められる事情があるか

この労働条件とは、賃金、労働時間だけでなく、労働契約の内容となっている災害補償、服務規律、教育訓練、福利厚生等を含む一切の待遇が含まれます。

厚生労働省の通達では、次の内容が「不合理な労働条件」に該当する可能性があるとしています。

  • 正社員に通勤手当を支給するが、有期契約社員には支給しない。
  • 正社員は社員食堂を利用できるが、有期契約社員は社員食堂を利用できない。
  • 正社員には安全管理上の備品を無償で支給するが、有期契約社員からは、実費を徴収する。

これらを踏まえて、平成30年度までの早い時期に対応策を検討してください。

平成26年度 厚生年金保険料率が変わります。

平成26年度の厚生年金保険料率が9月分(10月末日納付分)から平成27年9月分まで変わります。

これは、平成16年の法改正により平成29年9月まで毎年改定されます。

詳細は、こちらをご覧ください。

http://www.nenkin.go.jp/n/data/service/0000021234TR9eODZF2H.pdf

 

 

労働安全衛生法一部改正

☐ 全従業員にストレスチェック義務化!

 

2014年6月、労働安全衛生法の一部が改正されました。

その中で、一番の注目が”ストレスチェック”です。

従来のメンタルヘルス対策から、一歩踏み込んだ内容です。

主要ポイントは、以下の3つです。

1.従業員50人以上の事業所は、1年に1回、医師によるストレスチェックの実施を義務付けられました。(50人未満の事業所は、努力義務)

2.事業所は、ストレスチェックの結果を従業員に通知して、従業員が希望した場合は医師による面接指導を実施しなければなりません。

3.その結果、医師の意見を聴いたうえで、必要な場合は、作業の転換、労働時間の短縮、その他適切な措置を取らなければなりません。

 

☐ ストレスチェックとは、どんな検査?

 

ストレスの症状を確認する項目は、厚生労働省が「労働安全衛生研究所『ストレスに関する症状・不調として確認することが適当な項目等に関する調査研究』報告書」(2012年10月)の資料をもとに9項目が設定されました。(追加項目も検討されているようです。)

< 疲 労 >

    1. ひどく疲れた
    2. へとへとだ
    3. だるい

< 不 安 >

    1. 気が張り詰めている
    2. 不安だ
    3. 落ち着かない

< 抑うつ >

    1. ゆううつだ
    2. 何をするのも面倒だ
    3. 気分が晴れない

 

この9項目をそれぞれ4段階に分けて点数を設け

(1)ほとんどなかった・・・・・・・ 1点

(2)ときどきあった・・・・・・・・ 2点

(3)しばしばあった・・・・・・・・ 3点

(4)ほとんどいつもあった・・・・・ 4点

 

これらの該当する点数を合計してストレス状態を判定します。当然点数が高い方がストレス度は高くなります。

施行日(2015年12月までのいずれかの時期)までには、見直し、追加も検討されていますが、各事業所は対策が必要になります。

 

恵庭市主催「労務管理セミナー」講師受任

恵庭市通年雇用促進協議会様より、昨年に引き続いてセミナー講師依頼のお話をいただきました。

今年は、介護福祉事業者様に、”労務管理”を主なテーマとして解説させていただく予定でおります。

開催は、9月16日ですが、具体的な内容はこれから市の担当の方と打合せをしていきます。

お忙しいなかを参加してくださる事業者様の期待を裏切らないようにしっかり準備を進めてまいります。

通勤手当の実費(現金)支給と現物(定期券)支給の注意点!

すでにご存知とは思いますが、通勤手当は、”賃金”の一部です。

労働基準法第24条1項には、賃金について以下のように書かれています。

「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外で支払い、また、・・・・(以下、省略)」

つまり、『通勤手当を支給する場合は、現金で支給しなければなりません。ただし、労働協約がある場合は、定期券(現物)で支給することも可能です。』

労働協約とは、会社と労働組合との間で締結されるものです。

それでは、労働組合があれば、労働協約を締結して定期券を現物支給することはできますが、労働組合のない会社は、定期券を現物支給できないのでしょうか?また、現に定期券を現物支給している会社もあるのではないでしょうか?

これから先は、労働組合のない会社の通勤手当の対応についてです。

通勤手当を支給する場合は、まず就業規則等に手当として”通勤手当”を支給する旨、そして1ヵ月分(例です。)の定期券代金相当分を現金で支給する旨を書きます。

例えば、就業規則に1ヵ月分の定期券(現物支給)を支給する旨書いてあると、厳密には労動基準法違反となります。もし、調査監督に入った労働基準監督署が、この場合どのように対応(指導、監督)するかはわかりません。しかし、対象の従業員に何か不都合、不利益があるでしょうか?

不利益という点では、会社が経費節減のために、これまで各月ごとに1か月分支給していたの定期代金相当分を割引率の大きい3ヵ月分あるいは6か月分を該当月に支給する場合は、ひと月として計算すると受け取る支給額がこれまでより低くなり、賃金としては減額になったとも考えられます。

この場合は、一つ目の対応として従業員個々に合意を得る(労働契約法第8条)。二つ目は、就業規則に”労働条件の不利益変更”の条文が書いてあることが前提ですが、変更の内容が合理的であるとして就業規則の”通勤手当”を書き換えて、従業員に周知させることです(労働契約法第9条、10条)。

実際には、従業員に3か月分あるいは6か月分等の定期券を購入してもらうことで、直接的な不利益はないと考えます。

以上、あるお客様からの質問に答える中でまとめたものです。

 

医療労務コンサルタント研修を終えて

4月26日、27日の2日間、北海道社会保険労務士会が主催する「医療労務コンサルタント研修」を受講してきました。

たった2日間でしたが、病院規模の大小を問わず、医療現場の医師、看護師等の厳しい労働環境の実態、抱えている課題を認識することができました。

医療スタッフは、高度な使命感と倫理感を持った専門職です。

”人の命”に携わるため緊急の場合などは、勤務時間終了後でも、休憩時間であっても、休日であっても治療しなければならない状況が多々あります。

しかしながら、労働時間の管理が不十分な病院の場合、過重労働・睡眠不足によってストレスが蓄積され、やがてうつ病(うつ状態)となり、ついに休職あるいは退職しなければならず、結果として医療現場は慢性的に人手不足で、ますます多忙という悪循環に陥っています。

病院はそれぞれ事情は異なると思いますが、まず改善できるところから取り組み、スタッフの休憩時間・休日を確保する体制づくりが急務と考えます。

次に医療現場を一時的に離れている医師、看護師等の確保のために、復帰しやすい労働環境づくりが重要と考えます。

厚生労働省は、平成25年に「医師や看護職員等の幅広い医療スタッフを含めた医療機関全体で『雇用の質』の向上に取り組むことが重要である」と認識し、「医療分野の『雇用の質』の向上プロジェクト報告」をまとめました。

今後、厚生労働省は新たな対策・方針を発表するようです。

私も、さらに勉強と経験を積み重ね、医療現場の改善に貢献していきたいと思った研修でした。

賃金の支払に関する5つの原則

先日、賃金の支払に関する問い合わせがありました。

労働基準法では、賃金の支払について5つの原則を定めています。

第24条に「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。」と書かれています。これを”賃金支払5原則”と言っています。

① 通貨支払の原則

賃金は、通貨(お金)で支払わなければなりません。小切手や現物給与は禁止です。但し、例外として労働協約がある場合は、通勤定期券等の現物支給が認められています。預金口座への振り込みは、対象となる本人の同意を得た場合に認められます。

② 直接払いの原則

賃金は、直接本人に支払われなければなりません。代理人はもちろん親権者にも支払うことは禁止です。但し、本人が病気などの場合に、使者として受け取ることは認められています。

③全額払いの原則

賃金は、その全額を本人に支払わなければならず、会社から購入した商品があったとしても、その代金として控除することは禁止です。但し、社会保険料、所得税、住民税などを控除する場合や商品購入代金を控除する旨労使協定を締結した場合には、その額を控除して支払うことはできます。

④ 毎月1回以上の原則

賃金は、毎月1日から末日の間に1回以上支払わなければなりません。年俸制でも分割して毎月支払わなくてはなりません。

⑤ 一定期日払いの原則

賃金は、毎月一定の期日に支払わなければなりません。一定期日とは、15日、25日、末日のことをいい、「第4週の金曜日」とか「15日から25日までの間」という定めは認められません。支払期日は、会社が就業規則等で決めておけばよく、労働関係法令に「〇〇日に支払わなければならない。」などと定められたものはありません。

会社で決めた支払期日が、土・日曜日、祝・祭日で休日の場合は、その前日に繰り上げても、休日明けに繰り下げても構いません。但し、その点についても、就業規則等に決めておく必要があります。