産休を有給休暇に替えられる?

みなさん、こんにちは。

「産休を取りたいが年次有給休暇としてとることはできるか?」

先日、今年4月1日から施行する『年間5日の年次有給休暇付与義務』について

説明していた事業所で,一人の職員の方からこんな質問がありました。

(※この事業所は、産前産後休暇及び育児休業期間は無給です。)

 

労働基準法第65条には、

第1項 使用者は、6週間(多胎妊娠の場合にあっては、14週間)以内に

出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業

させてはならない。

第2項 使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。

ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者に

ついて医師が支障がないと認めた業務に就かせることは差し支えない。

 

と規定されています。

産前休暇は、女性が請求した場合に会社は休暇を与えなければならず、

請求しない場合は、女性職員は働くことになります。(第1項)

働いているのであれば『有給休暇を請求する権利もある』ということになり

本人から産前休暇について有給休暇の請求がある場合は、与えなければならない

ことになります。

 

産後休暇は、「原則として8週間は働かせてはならない」

となっているので働くことはできず、よって有給休暇は請求できない

ことになります。(第2項)

ただし、6週間経過後は、女性が請求し、医師が認めた場合は

働くことができますので、その日について有給休暇を請求した場合には

与えなければならないということです。

 

育児休業については、育児に係る休業を申し出ることでその間は働く意思が

ないということであり、育児休業期間は有給休暇を請求することはできません。

 

以上です。

 

 

 

 

”有給休暇5日 消化義務” 厚労省案

トップタイトル記事が2月4日付日経新聞に掲載されていました。

記事の一部を抜粋しますと、

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厚生労働省は2016年4月から社員に年5日分の有給休暇を取らせるよう企業に義務付ける方針だ。19年4月からは中小企業の残業代も引き上げる。

6日をめどに開く労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の分科会に、報告書の最終案として示す。政府は今通常国会に”労働基準法”の改正案を出し、16年4月に施行する。

有休は6年半以上働けば年20日分もらえるようになっているが、日本では実際に取った取得率が50%弱にとどまる。管理職を含むすべての正社員に年5日分の有休を取らせることを企業の法的義務にする。

社員から有休取得を申し出る今の仕組みは職場への遠慮で休みにくい。

(中 略)

中小企業の残業代も引き上げる。月60時間を超える残業には通常の50%増しの賃金を払う。現在の25%増しから大企業と同じ水準に引き上げ、中小の経営者に過労対策に取り組んでもらう。

16年4月の施行を目指していたが、残業が多いトラック運送業界が反対。施行日をずらすことにした。

(後 略)

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これまでも『社員が退職するとき、引継ぎが不十分なまま残り退職日までの日数を有休の消化に充てられる』などと対策のご相談をお受けすることがあります。

「会社は、年休のうち5日超の部分は時季を定めることができる」(労基法第39条6項)の規定と今回の改正案に基づき、計画的に消化する方法を検討されてはいかがでしょうか?

また残業代の引き上げについては、2010年4月から大企業に対して施行済みです。当時、中小企業については「当分の間適用を猶予する」となっていました。

内容を確認しますと、『1か月の残業時間のうち、60時間を超える部分については割増率を25%から50%に引き上げる』というものです。

(詳細はこちら)http://www.mhlw.go.jp/topics/2008/12/dl/tp1216-1e.pdf

これを2019年4月からは、中小企業にも適用する方向です。 残業の多い事業所は、今から対策を検討する必要がありそうです。

 

従業員の年次有給休暇取得は権利!

最近、年次有給休暇付与について経営者の方から相談を受けます。

特に多いのは「退職時にまとめて請求されるため、引き継ぎができない。」というご相談です。

たしかに年次有給休暇取得は従業員の権利です。

ただし、労働基準法第39条では、雇い入れ日から6カ月継続勤務し全労働日の8割以上出勤した者に10労働日(10日)与えなければならない旨書かれています。

つまり無条件ではないということです。(特に8割以上出勤は、見落としがちです。)

さらに正常な業務運営ができないときは従業員の請求された日を変更できますし、年次有給休暇の付与日程を会社が計画的にきめることもできます。

ただし、これには条件がふたつあり、一つは労使協定が必要、もうひとつは、付与日数のうち、5日間だけは従業員が取りたいときに自由に取れるよう確保してあげなければなりません。

また、年間5日間の範囲で時間単位の年休を与えることも可能ですが、これも労使協定が必要です。

年次有給休暇をきちっと取る従業員とほとんど取らない従業員の不公平感をなくすためにも、冒頭の年休を取られたために引き継ぎができないと悩まないためにも、会社として計画的に消化できるよう工夫が必要です。

それでも最終的に退職時に年休を請求してきたときは、本人との話し合いによる解決になります。

時間単位年休 3つの疑問?

平成22年4月に労働基準法が改正され、時間単位年休が認められました。

皆さんの会社では、導入されたでしょうか。(就業規則の見直しが必要です。)

今回、実務的な問題を3つご照会したいと思います。

Q1. 時間単位年休は年次有給休暇のうち5日以内となっていますが、次年度に繰り越すことはできるでしょうか。

A1. 次年度の時間単位年休は、今年度から繰り越された日数と合わせて5日以内となります。つまり今年度の残日数2日分あっても次年度の5日分を合わせた7日とはならずあくまでも5日間です。

Q2. 30分遅刻してきた従業員が時間単位年休を請求してきた場合、与えなければならないのでしょうか。

A2. 時間単位年休の付与は1時間単位となっています。30分の遅刻に対して30分の時間単位年休は与える必要はありません。また年休の申し出は原則として前日の業務終了までに請求するように会社で決めておくと本来の主旨に沿ったものとなり、管理もしやすくなります。

Q3. 始業時刻9時~終業時刻18時、休憩時間1時間と決まっている会社で、始業時刻から1時間の時間単位年休を取得し、10時に出勤して1時間の休憩時間を挟みながら19時まで仕事をした従業員に1時間の時間外手当を支払う必要がありますか。

A3. 労働基準法32条では1日の労働時間は、休憩時間を除いて8時間までとなっています。今回は実労働時間をみると8時間であり時間外労働の割増賃金を支払う必要はありません。

時間単位年休を認めることによって会社内の秩序が乱れるという理由から時間単位年休を導入しない会社もあります。上手に管理ができれば、従業員にとって利用しやすい制度だと思います。