通勤手当の実費(現金)支給と現物(定期券)支給の注意点!

すでにご存知とは思いますが、通勤手当は、”賃金”の一部です。

労働基準法第24条1項には、賃金について以下のように書かれています。

「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外で支払い、また、・・・・(以下、省略)」

つまり、『通勤手当を支給する場合は、現金で支給しなければなりません。ただし、労働協約がある場合は、定期券(現物)で支給することも可能です。』

労働協約とは、会社と労働組合との間で締結されるものです。

それでは、労働組合があれば、労働協約を締結して定期券を現物支給することはできますが、労働組合のない会社は、定期券を現物支給できないのでしょうか?また、現に定期券を現物支給している会社もあるのではないでしょうか?

これから先は、労働組合のない会社の通勤手当の対応についてです。

通勤手当を支給する場合は、まず就業規則等に手当として”通勤手当”を支給する旨、そして1ヵ月分(例です。)の定期券代金相当分を現金で支給する旨を書きます。

例えば、就業規則に1ヵ月分の定期券(現物支給)を支給する旨書いてあると、厳密には労動基準法違反となります。もし、調査監督に入った労働基準監督署が、この場合どのように対応(指導、監督)するかはわかりません。しかし、対象の従業員に何か不都合、不利益があるでしょうか?

不利益という点では、会社が経費節減のために、これまで各月ごとに1か月分支給していたの定期代金相当分を割引率の大きい3ヵ月分あるいは6か月分を該当月に支給する場合は、ひと月として計算すると受け取る支給額がこれまでより低くなり、賃金としては減額になったとも考えられます。

この場合は、一つ目の対応として従業員個々に合意を得る(労働契約法第8条)。二つ目は、就業規則に”労働条件の不利益変更”の条文が書いてあることが前提ですが、変更の内容が合理的であるとして就業規則の”通勤手当”を書き換えて、従業員に周知させることです(労働契約法第9条、10条)。

実際には、従業員に3か月分あるいは6か月分等の定期券を購入してもらうことで、直接的な不利益はないと考えます。

以上、あるお客様からの質問に答える中でまとめたものです。