これは社員3名を雇用しているソウト開発会社の代表(X氏)から伺った話です。
事業を始めて5~6年の会社ですが、家族的な職場の雰囲気を大事にしていました。
業績が伸びて業務も忙しくなったため、一人の正社員(Aさん)を中途採用しました。数か月経過したころからAさんは、業務中仕事に集中せず、ボーッとしているようになりました。注意しても直らないので、病院に行くよう勧めました。
病院の診断書は、うつ病でした。X氏は、Aさんと今後のことをいろいろ話し合い「仕事を辞めてきちんと病気を治したほうがいい。」という話をしました。Aさんも「じゃ、辞めます。」と返事をしました。X氏は退職の手続きをすませ、すべて終わったと思っていました。
この件についてほとんど忘れて忙しく業務をこなしていたX氏に、半年ほどたったある日、弁護士から一通の書類が送られてきました。
内容は、Aさんの代理人として「不当解雇に対する精神的損害賠償として、600万円を請求する。」ものでした。
家族的な職場の雰囲気を大事にしていたX氏は、Aさんを無理に辞めさせたつもりはなく、話し合いの上で、Aさんの体を気遣い、退職を勧めたつもりでいました。(当然労働基準法の知識はありません。)
この事件は、労働審判に持ち込まれ最終的に金銭的和解で合意しました。
X氏は、なぜこのようなことになったのかを考えていました。そんな矢先、次の事件が起きました。
別の社員(Bさん)がある日、出社せず連絡も取れなくなりました。無断欠勤です。3日目にようやく連絡が取れたBさんは、「体が重くてずっと寝ていた。」とのことでした。
家族的雰囲気の職場を重視するX氏は、翌日出社したBさんに無断欠勤を注意し、この間の仕事を取り戻すよう促しました。
問題発生はこの後です。
この様子を見ていた他の社員(Cさん)が、「無断欠勤をしたのに、なぜ処分をしないのか。」と不満を口にしました。「休んだ分の仕事をすぐ取り戻せばいいという問題ではない。そういうことであればみんな勝手に休むようになる。」という主張です。
X氏はCさんの意見に反論できませんでした。しかし、Bさんを処分もできませんでした。なぜなら社内に処分するルールを作っていなかったからです。
ルールがないまま処分すれば、その時の気分や相手によって処分内容が変わり、それも問題発生の一因になります。
X氏は多くの人に悩みを打ち明け、相談し、最終的にAさんの件から休職・復職・退職、Bさんの件から服務規律を念頭に社内ルール【就業規則】を作成しました。家庭的な職場の雰囲気は壊さないように心掛けたうえで指導を受けながら運用を考えています。
皆さんは、この会社は社員に恵まれない運の悪い会社だと思いますか。
それとも、十分あり得る問題だと考えますか。