「いじめ・嫌がらせ」が3年連続トップ!

先月、厚生労働省から「平成26年度個別労働紛争解決制度の施行状況」が発表されました。

内容のポイントは、

1.総合労働相談件数、助言・指導申出件数、あっせん申請件数のいずれも前年度と比べ減少。

  • 総合労働相談件数          1,033,047件(前年度比 1.6%減)
  • そのうち民事上の個別労働紛争相談件数 238,806件( 同   2.8%減)
  • 助言・指導申出件数           9,471件( 同   5.5%減)
  • あっせん申請件数            5,010件( 同    12.3%減)
  • 全国的に減少傾向にあるものの、総合労働相談件数は7年連続で100万件を超えるなど高止まり。

 

2.民事上の個別労働紛争の相談内容は、「いじめ・嫌がらせ」が3年連続トップ。

  • 「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数は62,191件(前年59,197件)で3年連続トップ、助言・指導の申出は1,955件(前年2,046件)で2年連続トップ、あっせんの申請は1,473件(前年1,474件)で初めてトップです。

 

3.助言・指導、あっせんともに迅速な処理

  • 助言・指導は1か月以内に97.3%、あっせんは2ヵ月以内に92.0%を処理しています。

 

個別労働紛争相談の内訳としては、「いじめ・嫌がらせ」が62,191件(21.4%)、「解雇」が38,966件(13.4%)、「自己都合退職」が34,626件(11.9%)と多くなっています。

相談者は、労働者(求職者を含む)が195,198件(81.7%)、と大半を占めており、事業主からの相談は24,766件(10.4%)でした。

相談対象の労働者の就労形態は、「正社員」が91,111件(38.2%)、「パート・アルバイト」が38,583件(16.2%)、「期間契約社員」が26,128%(10.9%)、「派遣労働者」が10,399件(4.4%)となっています。

 

【助言・指導の例】

事例1:いじめ・嫌がらせ

(事案の概要)

申出人はミスをすると上司から怒鳴られていた。会社の人事課に相談したところ、人事課は申出人の上司を指導したが、上司は申出人に仕事を与えなくなり、申出人が何らかの仕事をしていると、「仕事をするな。」と言って怒るようになった。精神的に耐えられないので、上司の接し方に改善を求めたいとして助言・指導を申し出たもの。

(助言・指導の内容・結果)

  • 事業主に対し、パワーハラスメントの提言で示されている類型(5)仕事を与えないことについて説明し、申出人の上司の行為がパワーハラスメントに該当する可能性があり、会社の責任が問われる可能性があることから、注意する等の対応を行なうよう助言した。
  • 人事課が、再度申出人の上司を指導し、上司は申出人への接し方を改善した。

 

事例2:解雇に関する助言・指導

(事案の概要)

申出人はパート社員として勤務していたが、習い事を始め、休みを増やしてほしいと事業主に申し出たところ、「今月末付で辞めてもらいたい。」と言われた。今、辞めさせられると困るため、解雇を撤回してほしいとして助言・指導を申し出たもの。

(助言・指導の内容・結果)

  • 事業主に対し、解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は無効となることを説明し、申出人と話し合う等の対応をとるよう助言した。
  • 助言に基づき、紛争当事者間で話し合いが行われ、申出人の雇用継続が認められた。

 

事例3:自己都合退職に係る助言・指導

(事案の概要)

申出人は、正社員として勤務していたが、ある月のある日に、1か月後の日付で退職を申し出たところ、申出人は会社に必要な人物であることを理由に「退職は認められない」と退職を拒否された。次の就職先がきまりそうなので、何とか円満に退職したいとして、助言・指導を申し出たもの。

(助言・指導の内容・結果)

  • ・事業主に対して、雇用は、解約の申入れの日から2週間経過することによって終了するという民法第627条第1項について説明し、申出人と話し合うよう助言した。
  • 助言に基づき、紛争当事者間で話し合いが行われ、紛争当事者間で納得したうえで、申出人は2か月後の日付で退職することになった。

 

【あっせんの例】

事例1:いじめ・嫌がらせに係るあっせん

(事案の概要)

申請人は、店長から、日常的に「バカ」「お前」などと言われ、精神的苦痛を感じており、店長に改善を求めて抗議したものの、店長は全く聞く耳を持たず、退職に追い込まれた。このため、精神的損失を被ったことに対する補償として、50万円の支払いを求めたいとしてあっせんを申請した。

(あっせんのポイント・結果)

  • あっせん委員が双方の主張を聞いたところ、被申請人は「バカ」や「お前」などと言った発言は冗談であるとしていじめ・嫌がらせの事実を認めなかったものの、問題を解決するために、解決金として5万円を支払う考えを示した。
  • 申請人は提示された解決金額について同意したため、解決金として5万円を支払うことで合意が成立し、解決した。

 

事例2:解雇に係るあっせん

(事案の概要)

申請人は、正社員として勤務していたが、社長から、「仕事に対するやる気が見えない。」と言われ、解雇を通告された。事前に注意や指導がなく、いきなり解雇されたため、納得がいかない。このため、経済的・精神的損失に対する補償金として、100万円の支払いを求めたいとしてあっせんを申請した。

(あっせんのポイント・結果)

  • あっせん委員が双方の主張を聞いたところ、被申請人は、解雇予告手当を支払ったと主張したものの、あっせん委員の調整の結果、解決金として40万円支払う考えを示した。
  • 申請人は提示された解決金額について同意したため、解雇予告手当とは別に解決金として40万円を支払うことで合意が成立し、解決した。

 

事例3:雇止めに係るあっせん

(事案の概要)

申請人は半年ないし1年の期間契約を反復更新して勤務していたが、「総合的に判断した結果、次期契約を更新しない」として、雇止めされて退職した。雇止めに納得がいかないので、復職を求めるとともに、復職ができないのであれば、経済的・精神的損失に対する補償金として、30万円の支払いを求めたいとしてあっせんを申請した。

(あっせんのポイント・結果)

  • あっせん委員が双方の主張を聞き、被申請人に対し、解決の方向性を確認したところ、被申請人は申請人の復職には応じられないが、解決金として10万円を支払う考えを示した。
  • これを受けて、申請人に対し、解決のために金額の譲歩の考えを確認したところ、15万円程度であれば可能である旨考えが示された。
  • あっせん委員が、再度、被申請人に解決のための譲歩を促したところ、被申請人は申請人が提示した解決金額について同意したため、解決金として15万円支払うことで合意が成立し、解決した。

 

以上、それぞれ3例ずつ紹介しました。