”有給休暇5日 消化義務” 厚労省案

トップタイトル記事が2月4日付日経新聞に掲載されていました。

記事の一部を抜粋しますと、

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厚生労働省は2016年4月から社員に年5日分の有給休暇を取らせるよう企業に義務付ける方針だ。19年4月からは中小企業の残業代も引き上げる。

6日をめどに開く労働政策審議会(厚労相の諮問機関)の分科会に、報告書の最終案として示す。政府は今通常国会に”労働基準法”の改正案を出し、16年4月に施行する。

有休は6年半以上働けば年20日分もらえるようになっているが、日本では実際に取った取得率が50%弱にとどまる。管理職を含むすべての正社員に年5日分の有休を取らせることを企業の法的義務にする。

社員から有休取得を申し出る今の仕組みは職場への遠慮で休みにくい。

(中 略)

中小企業の残業代も引き上げる。月60時間を超える残業には通常の50%増しの賃金を払う。現在の25%増しから大企業と同じ水準に引き上げ、中小の経営者に過労対策に取り組んでもらう。

16年4月の施行を目指していたが、残業が多いトラック運送業界が反対。施行日をずらすことにした。

(後 略)

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これまでも『社員が退職するとき、引継ぎが不十分なまま残り退職日までの日数を有休の消化に充てられる』などと対策のご相談をお受けすることがあります。

「会社は、年休のうち5日超の部分は時季を定めることができる」(労基法第39条6項)の規定と今回の改正案に基づき、計画的に消化する方法を検討されてはいかがでしょうか?

また残業代の引き上げについては、2010年4月から大企業に対して施行済みです。当時、中小企業については「当分の間適用を猶予する」となっていました。

内容を確認しますと、『1か月の残業時間のうち、60時間を超える部分については割増率を25%から50%に引き上げる』というものです。

(詳細はこちら)http://www.mhlw.go.jp/topics/2008/12/dl/tp1216-1e.pdf

これを2019年4月からは、中小企業にも適用する方向です。 残業の多い事業所は、今から対策を検討する必要がありそうです。

 

36協定は届出ていますか?

最近、就業規則の作成や労務相談をお受けするとき、36協定について説明を求められます。

「36協定って、聞いたことはありますが、何のことですか?」

ご相談を受けた会社(複数)は共通して、『これまで残業をしたときは労働基準法に基づいて残業代を支払っており、従業員からも改善を求められたことはなく、問題はない。』と考えていました。

まず、36協定とは何か?

”36協定”とは、労働基準法36条に定められている協定で、通称”36協定”と呼んでいます。

その条文には、『使用者は、会社で労働組合がある場合はその労働組合、労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者と書面で労使協定を締結し、所轄労働基準監督署長に届出た場合は、時間外労働、休日労働させることができる』旨書かれています。

言い方を変えると、「36協定を届出ていない場合は、時間外労働、休日労働させてはいけない。また、36協定を届出た場合は、届出た時間の範囲で残業や休日労働させることが出来る。」ということです。

皆さんがよく勘違いされるのは、「残業代を支払っていれば36協定がなくても問題はないだろう」と思われていることです。

36協定は、労使間で締結しただけでは効力はなく、必ず1年に1回更新して届出なければなりません。自動更新もありません。

労働基準法36条では残業時間も定められており、原則として1ヵ月45時間、1年間360時間の範囲です。(特別条項付というものもありますが今回は省略します。)

36協定に違反して労働させると、労働基準法32条(労働時間)、35条(休日)の違反となり罰則(6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金)があります。

これまで届出をしていない事業者様は、いきなり罰せられることはありませんので、この機会に労働基準監督署あるいは身近な社会保険労務士にお尋ねください。

着替えの時間は、労働時間?

先日、「着替えの時間は労働時間と見なければならないのか?」との質問を受けました。

『従業員は、本来”作業に適した服装”で労務を提供しなければならず、不適当な服装と判断した場合は、会社はその就業を拒否できる。』とういうのが学説(コメンタール労働基準法)の通説で、着替えの時間は原則として労働時間には当たらないと考えます。

では、例外とするその時間が会社の指揮命令下にある労働時間と認められる具体的な場合とは、

① 会社の命令で着替えることが義務付けられ拘束されており、かつ服装について点検がその場で行われる場合

② 業務の性質上、作業服に着替えて作業しなければならないもので、服装管理を会社が行なっている場合(警察官・消防士・ホテルのボーイ・ガードマン等)

③ 業務の性質上、特殊な服装をしなければならない場合(熱処理現場の耐熱服、商品等の宣伝用服装)

以上から、業務上の必要性、義務性、会社の直接的な指揮命令下で行なう等拘束性がある場合は、労働時間と認められ可能性が高くなります。

しかし、会社の規則で、始業時刻までに作業服・安全帽等の着装が義務付けられていて、更衣室での装着までは義務付けられておらずそこに保管されている状態で、作業着等での通勤に心理的抵抗があり、会社で作業着に着替える場合の時間は、一般的には労働時間と扱わなくてもいいと考えます。

労働時間の管理

労働時間とは、労働者が会社の指揮命令下にある時間であり、労働契約書、就業規則で定めている時間だけを労働時間とみることではありません。

例えば、始業時刻前の全員で慣行的に行われている清掃時間、あるいは伝達事項や職場規律の確認のための朝礼等は指揮命令下にある労働時間と判断される可能性が高いと考えます。

仕事前の着替えの時間は、原則として労働時間とはみられませんが、制服が決まっている(警察官、消防士、ガードマン等)場合は労働時間に含まれます。

業務の引継時間は労働時間です。休憩時間中の電話当番も労働時間です。

業務終了後クレーム対応のため、あるいは休日の緊急事態に備えて会社の携帯電話をそばにおいて行動しなければならない時間は、一概に労働時間とは判断できません。

また、夜勤看護師が急な欠勤や突然休暇になったときの人員不足に備えて当番制で自宅待機している看護師等の場合は待機の状況によります。ある程度自由に時間を過ごしている中で仕事が入った場合は、それまでの待機時間は労働時間とみられない場合が多いようですが、具体的にそのときの状況によって判断されます。夜間宿直も状況によって判断が分かれます。

訪問介護事業所では、ホームヘルパーが自宅から利用者宅へ向かう時間は通勤時間であり労働時間ではありませんが、一度出社してから利用者宅へ向かう時間は労働時間になります。利用者宅から利用者宅への移動時間、利用者宅から会社に戻る時間、報告書を作成する時間は労働時間ですが、利用者宅から自宅に戻る時間は通勤時間になります。

派遣労働者は、派遣元の会社と雇用契約を結んでいますが、労働時間については派遣先に管理する義務があり、時間外労働、休日出勤は派遣元で締結した36協定の範囲で派遣先の会社が責任を負います。

管理監督者は、深夜時間を除き労働時間の制限はありませんが、会社内の管理監督者の定義が曖昧なためトラブルになった事例はあります。

厚生労働省は、この十数年特に労働時間の管理指導に重点を置いています。。長時間の残業によるメンタルヘルス疾患の予防が主な目的であり、その一環として時間外労働の割増賃金支払いを強く指導しています。

会社として労働時間の管理は、タイムカードによる方法でも自ら確認する方法でもかまいませんが、トラブルを予防するためにも、また不幸にしてこれらのトラブルが発生したときの反証材料のためにも有効となります。

時間外労働

先日、次のような質問を受けました。

「従業員が『始業時刻の10分前に出社してタイムカードを押したらそこから仕事がはじまることになるはずだ。』と言ってきたが、その時刻から労働時間としてみなければいけないのか。」

結論からいうとこれは労働時間に入れなくてもいいと考えます。

その方に確認したことは、

  1. 始業時刻が明確になっているか。(書面で提示あるいは就業規則に記載している)
  2. その仕事が会社の指揮命令によってされているか。
  3. 会社が労働時間をきちんと把握しているか。
  4. 出社時刻と始業時刻を明確に分けているか。
  5. 従業員に会社として始業時刻の考え方を理解させているか。

会社として、以上の点をきちんと整理し、明確にしておけば、今回のような従業員の言い分に対しては、「労働時間には入らない。」と主張できると考えます。

1か月単位変形の時間外労働の計算は?

1か月単位の変形労働時間制を導入している会社では、時間外労働をどのように管理されているでしょうか。

たとえば、シフトした1か月の労働時間(所定労働時間)を超えた時間を時間外労働として計算されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

まず、1か月の法定労働時間の総枠

40時間×変形期間の暦日数(1カ月)÷7 で計算し、1か月が31日の場合は 177.1時間となります。

しかし、労働基準法第32条には、労働時間は休憩時間を除き、週40時間 1日8時間 しか規定がありません。つまり1カ月177.1時間は法定労働時間の総枠に収まっているかの目安であり、法律に決められた法定労働時間ではありません。

この場合の時間外労働の管理は、シフトした1日の所定労働時間が8時間ならそれを超えた時間、9時間ならそれを超えた時間が時間外労働となり割増賃金となります。

ちなみにシフトした時間が7時間で1時間の残業をした場合は、1時間分の通常賃金を支払えばよく割増にはなりません。

次に、シフトした週の所定労働時間が40時間ならそれを超えた時間、45時間ならそれを超えた時間が時間外労働になります。

最後に、1か月の総枠を超えた時間があればその時間を時間外労働として計算します。

大まかな内容となりましたが、多少ともご理解いただけたでしょうか。

労働時間の管理!

最近、退職した従業員から未払い残業代を請求されるトラブルが増えています。残業があったことを証明するのは労働者側の責任です。会社側は普段から従業員の労働時間を把握していれば、それに対してきちんと反証できますし、反証材料が不十分だと支払いが必要になる可能性があります。皆さんの会社では、労働時間はどのように管理されているでしょうか。

まず、就業規則等で始業・終業時刻がきちんと規定されていることが前提です。次に時間の管理方法は 1)社長自らチェックしている 2)タイムカードを活用している 3)自己申告をさせている 等あると思いますがいずれにしても厚生労働省ではこの管理を「使用者の責務」として指導しています。

タイムカードを活用している場合、労働基準監督署では一般的に打刻された始業時刻と終業時刻の間を、休憩時間を除き会社の指揮命令下にある労働時間とみています。

しかし、たとえば「交通の便の都合で始業開始の30分前に出社した」とか「業務終了後30分雑談をして退社した」等は日常あり得ることです。ではこのそれぞれ30分は労働時間となるでしょうか。普通に考えるならば労働時間ではありません。会社としてたとえば半年後、労働基準監督署から指摘されたときに「会社の指揮命令下にない」ことを証明しなければなりません。

そのためには、タイムカードとは別に始業・終業時刻を管理する会社独自の方法を決めて、それを従業員にもきちんと説明し、理解を得てから運用することです。それが後日発生するかもしれない労働時間のトラブルを最小限に抑える対策のひとつとなり、あわせて無駄なコストを抑えることにもなります。