年俸1,700万円でも残業代は含まれず!

みなさん、こんにちは。

今月(7月)7日、労務問題に関して経営者側にまた厳しい判決がありました。

病院が、勤務医と年俸1,700万円で残業代も含む労働契約を締結していたにも関わらず、最高裁判決で 『年俸に残業代は含まれない!』 という判断がされました。

以下に、日本経済新聞(7月10日朝刊)の一部記事を掲載します。

 

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高額年俸「残業代含まず」

最高裁判決 勤務医の主張認める

 

勤務医の高額年俸に残業代が含まれるかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第二小法廷(小貫芳信裁判長)は7日、「残業代に当たる部分を他の賃金と判別できず、残業代を年俸に含んで支払ったとはいえない」と判断した。好待遇を理由に「年俸に含まれる」とした1、2審判決を破棄した。

最高裁の判例は、労働基準法の規定に沿って時間外賃金が支払われたことをはっきりさせるため、「時間外の割増賃金は他の賃金と明確に判別できなければならない」としている。

第二小法廷は高額な年俸の場合も例外とせず、これまでの判例を厳格にあてはめた。(中略)

 

第二小法廷は「雇用契約では時間外賃金を1,700万円の年俸に含むとの合意があった」と認めたが、「どの部分が時間外賃金に当たるかが明らかになっておらず時間外賃金が支払われたとはいえない」と判断。未払い分の額を算定するため、審理を東京高裁に差し戻した。(中略)

 

一審・横浜地裁判決は「医師は労働時間規制の枠を超えた活動が求められ、時間数に応じた賃金は本来なじまない」と指摘。

好待遇であることから「時間外賃金は年俸に含まれている」として病院側の主張を認めた。二審・東京高裁も一審の判断を支持し、医師側が上告していた。(中略)

 

男性医師は12年9月に勤務態度を理由に解雇され、解雇無効や未払い賃金の支払いなどを求めて提訴した。7日の判決で、解雇有効とした1,2審の判断は確定した。

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みなさん、どんな感想を持たれましたか。

何か、『やるせない』と感じたのは私だけでしょうか。

 

 

北海道の中小企業 2017年の賃上げは‥

みなさん、こんにちは。

一般社団法人北海道中小企業家同友会は、北海道内の中小企業を対象とした2017年の賃上げと初任給のアンケート調査を発表しました。

それによると、

  • 平均賃上げは、4,576円 (アップ率2.08%(平均年齢39歳))
  • 初任給 大卒・営業職 179,983円  高卒・営業職 153,193円

その他詳細は、以下をご確認ださい。(回答企業が187社とサンプル数が少ないので参考資料としてご覧ください。)

http://www.hokkaido.doyu.jp/12data/1704/print.pdf

以上です。

 

 

最低賃金1,000円実現はいつ?

みなさん、こんにちは。

2016年度の都道府県別最低賃金が発表になりました。これに基づき10月以降順次実施される予定です。

今回の特徴は、この10年来最大の上げ幅となり、全国平均で823円と25円高く、また各地域の経済指標をもとに、25円(東京・神奈川・大阪・愛知・千葉・埼玉・兵庫)、24円(京都・静岡・三重他6県)、23円(香川)、22円(北海道・岐阜・福岡他13県)、21円(福島・山形・愛媛他11県)とそれぞれアップし、これによって一番低い宮崎・沖縄でも714円と700円を超えました。

これは、6月に閣議決定した『ニッポン一億総活躍プラン』の、”毎年3%アップ” ”最低賃金1,000円” の実現と地方の人手不足改善を考慮したためと言われています。

国の目標を実現するために単純計算しますと以下のようになります。

全国平均 823円(2016年度)→ 1,012円(2023年度)

東  京 932円(2016年度)→ 1,149円(2023年度)

北  海  道 786円(2016年度)→   968円(2023年度)

東京は、2019年度(1,019円)にはすでに1,000円を超え、全国平均では2023年度に達成することになりますが、一方で達成困難な地域もありそうです。

経営者の立場でいいますと、現時点でも最低賃金程度では人材の確保は難しい地域が多く、今後どこまで時給が上昇するか気がかりです。

こちらも一読ください。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160823-00000080-mai-soci

 

以上です。

 

通勤手当の実費(現金)支給と現物(定期券)支給の注意点!

すでにご存知とは思いますが、通勤手当は、”賃金”の一部です。

労働基準法第24条1項には、賃金について以下のように書かれています。

「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外で支払い、また、・・・・(以下、省略)」

つまり、『通勤手当を支給する場合は、現金で支給しなければなりません。ただし、労働協約がある場合は、定期券(現物)で支給することも可能です。』

労働協約とは、会社と労働組合との間で締結されるものです。

それでは、労働組合があれば、労働協約を締結して定期券を現物支給することはできますが、労働組合のない会社は、定期券を現物支給できないのでしょうか?また、現に定期券を現物支給している会社もあるのではないでしょうか?

これから先は、労働組合のない会社の通勤手当の対応についてです。

通勤手当を支給する場合は、まず就業規則等に手当として”通勤手当”を支給する旨、そして1ヵ月分(例です。)の定期券代金相当分を現金で支給する旨を書きます。

例えば、就業規則に1ヵ月分の定期券(現物支給)を支給する旨書いてあると、厳密には労動基準法違反となります。もし、調査監督に入った労働基準監督署が、この場合どのように対応(指導、監督)するかはわかりません。しかし、対象の従業員に何か不都合、不利益があるでしょうか?

不利益という点では、会社が経費節減のために、これまで各月ごとに1か月分支給していたの定期代金相当分を割引率の大きい3ヵ月分あるいは6か月分を該当月に支給する場合は、ひと月として計算すると受け取る支給額がこれまでより低くなり、賃金としては減額になったとも考えられます。

この場合は、一つ目の対応として従業員個々に合意を得る(労働契約法第8条)。二つ目は、就業規則に”労働条件の不利益変更”の条文が書いてあることが前提ですが、変更の内容が合理的であるとして就業規則の”通勤手当”を書き換えて、従業員に周知させることです(労働契約法第9条、10条)。

実際には、従業員に3か月分あるいは6か月分等の定期券を購入してもらうことで、直接的な不利益はないと考えます。

以上、あるお客様からの質問に答える中でまとめたものです。

 

賃金の支払に関する5つの原則

先日、賃金の支払に関する問い合わせがありました。

労働基準法では、賃金の支払について5つの原則を定めています。

第24条に「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。」と書かれています。これを”賃金支払5原則”と言っています。

① 通貨支払の原則

賃金は、通貨(お金)で支払わなければなりません。小切手や現物給与は禁止です。但し、例外として労働協約がある場合は、通勤定期券等の現物支給が認められています。預金口座への振り込みは、対象となる本人の同意を得た場合に認められます。

② 直接払いの原則

賃金は、直接本人に支払われなければなりません。代理人はもちろん親権者にも支払うことは禁止です。但し、本人が病気などの場合に、使者として受け取ることは認められています。

③全額払いの原則

賃金は、その全額を本人に支払わなければならず、会社から購入した商品があったとしても、その代金として控除することは禁止です。但し、社会保険料、所得税、住民税などを控除する場合や商品購入代金を控除する旨労使協定を締結した場合には、その額を控除して支払うことはできます。

④ 毎月1回以上の原則

賃金は、毎月1日から末日の間に1回以上支払わなければなりません。年俸制でも分割して毎月支払わなくてはなりません。

⑤ 一定期日払いの原則

賃金は、毎月一定の期日に支払わなければなりません。一定期日とは、15日、25日、末日のことをいい、「第4週の金曜日」とか「15日から25日までの間」という定めは認められません。支払期日は、会社が就業規則等で決めておけばよく、労働関係法令に「〇〇日に支払わなければならない。」などと定められたものはありません。

会社で決めた支払期日が、土・日曜日、祝・祭日で休日の場合は、その前日に繰り上げても、休日明けに繰り下げても構いません。但し、その点についても、就業規則等に決めておく必要があります。

 

北海道最低賃金 時間額705円

北海道内で事業を営む会社経営者及びそこで働くすべての労働者(臨時、パートタイマー、アルバイト等を含みます。)に適用される北海道最低賃金(地域別)が改定されました。

時間額 705円 (効力発生年月日 平成23年10月6日)

最低賃金には、精皆勤手当、通勤手当、家族手当、臨時に支払われる賃金、および時間外等の割増賃金は算入されません。

一部特定の産業は、産業別最低賃金が適用されます。

割増賃金計算と除外できる手当!

割増賃金の計算方法は、皆さんご存知のことと思います。

1時間単価=月給額(月給制の場合)÷月平均所定労働時間数

月給額のうち割増賃金の計算から除外できる手当があることを知っておられる方も多いと思います。

  1. 家族手当
  2. 通勤手当
  3. 子女教育手当
  4. 住宅手当
  5. 臨時に支払われた賃金
  6. 一か月を超えるごとに支払われた賃金

これらは法律で決められた除外できる手当ですが、会社で独自に決めた手当(例えば皆勤手当)は原則として計算の基礎から除くことはできません。しかしだからと言って基本給を抑えて、上記手当を多くしても実態が伴っていなければ賃金とみられます。例えば

家族手当として「妻帯者 2万円、独身者 1万円」等の一定額を支給する場合は、賃金とみられる可能性があります。

通勤手当として通勤距離に対して一定額を支給する場合は、一部賃金とみられる可能性があります。

住宅手当として「賃貸住宅 1万円、持家住宅 2万円」等の一定額、あるいは全員に一律に定額を支給する場合は、賃金とみられる可能性があります。

逆に、営業手当、役職手当等を「時間外手当、深夜労働、休日労働」の代替として当てる旨明確に就業規則等に記載があれば除外できることもあります。

皆さんの会社では、余分な手当を含めて割増賃金の計算をしていませんか。あるいは、計算に必要な手当てを除いて計算していませんか。あわせて就業規則(賃金規程)の手当をもう一度見直してみてはいかがでしょうか。

最低賃金を800円に!

厚生労働省では、2020年までに最低賃金を800円まで引き上げることを目指し、その支援対策を設けました。

地域別最低賃金額が700円以下(北海道も入ります。)の地域の中小企業が対象です。

① 4年以内に最低賃金を800円以上にすること

② 業務改善計画(賃金制度、就業規則の作成、研修他)を作成し、実施すること

この支給要件を満たした事業主(支給対象事業主の条件は別にあります。)に、業務改善経費の2分の1(下限額5万円、上限額100万円)を「業務改善助成金」として支給します。

今回の助成金は、賃金引き上げの対策に要した費用に対するものです。(引き上げた最低賃金分を助成するものではありません。)

概略は、こちらをご確認ください。