契約(変更)は必ず書面で!

先日、ある裁判を担当された原告側弁護士から判決内容を聞く機会がありました。

訴訟の主な内容は、退職した従業員(原告)が会社(被告)に「賃金の減額による未払い分の賃金を支払え。」というものです。

会社側(被告)は、「賃金を減額することは従業員に説明し、同意を得ている。」と主張しました。

この会社(被告)と従業員との賃金決定は、以前の職場の賃金をもとに個々に決定しており、この従業員(原告)とも年額基本賃金を決定し、手当も賞与もなしという契約をしました。

被告の会社は中途採用が多く、従業員の賃金にバラツキがあり、不公平な格差が生じたため全体の賃金体系の見直しを必要と考えました。

被告は、原告の1か月当たりの基本賃金を減額しました。そのかわり従来はなかった「職務手当」(定額制時間外賃金として)と、年2回の賞与2カ月分を支給することとしましたが、年間総額では、約2割の減額としました。

被告はこれを原告に入社2カ月後に説明し同意を得て、その2カ月後の賃金支払日から実施しましたが、労働条件承諾書に署名させたのは、初めて説明してから1年後でした。

原告は、賃金減額の同意を否認しています。原告は、賃金減額を提示されたとき、「ああわかりました。」と返事をしたことは認めています。

その点を裁判官は、「そのこと(『ああわかりました』)が賃金減額に同意したとの認定は困難である。その理由は、労働者が経営者側に不評を買わないようにしたり、その場では差し障りのない返事をすることはよくあることである。しかし、賃金減額は労働者の生活を直撃する重大事であるから簡単に承諾できることではない。合意を得たのであれば、通常その時点で書面を取り交わしておくものである。」としました。

「職務手当」(定額制時間外賃金)についても興味深い解釈がありましたが、こちらは別の機会にします。

この裁判の判決は、ほぼ原告の主張が認められたものになりました。この裁判は、控訴されています。

この会社(被告)は就業規則があり、賃金規定も諸手当も時間外労働に関する規定もありましたが、規則が会社にあっていなかったのか、うまく運用されていなかったのか、結局数百万円の大きな金額を支払うことを命じられました。