就業規則を確認して、もし一つでも当てはまるものがあれば労使トラブルの原因になるかもしれません。
労使トラブルを避けるためにも、この機会に就業規則を見直しませんか?
就業規則は、「会社と従業員との間で交わす約束ごと」です。
そして労務トラブルのほとんどは、就業規則に必要な内容が抜け落ちていたり、曖昧な書き方で従業員と会社の間で理解の仕方にズレがあったりすることで起こります。
ほとんどの社員は時間通りに働いてくれるものの、いつも1分前になってようやく出社してくる社員、何度注意しても遅刻を繰り返す社員がいてどうしたものかと困っている。こんなとき、あなたならどんな指導を行いますか?
2人を呼び出して、「社会人としての自覚を持ち、始業時刻から働けるよう早めに出社しなさい」と指導すれば、問題は改善されるのでしょうか。おそらく、そう簡単にはいきませんよね。
ぎりぎりで出社する人は、「とにかく朝9時に会社にいればそれで良い」と考えているので毎日ぎりぎりに出社します。遅刻をする人も、「遅刻をしたって誰かに迷惑をかけるわけじゃないし、仕事の能率も変わらない」と思っているからこそ、何度指導されても遅刻を繰り返すのです。
問題解決に必要なのは、「この会社では朝9時に仕事が始められるよう、少し余裕をもって出社しなければならないというルールになっている」と理解してもらうことです。
この例は、わかりやすくイメージしていただくために“当たり前のこと”を紹介しましたが、このような小さなところから“差”が出てくることを認識していただければと思います。
どこにでもある就業規則のひな形やサンプルは、「どんな会社にも当てはまるように」作られています。そのまま引用してしまうと、人によって認識に違いが出てしまい、細かな労働トラブルに対処できないのです。
就業規則を正しく理解してもらうためには、あなたの会社の労働環境、給与、仕事の内容といった部分を見て、実情に合わせた手直しをすることが重要です。
A社では、「前の会社では営業をしていて、成績はトップクラスでした!」というアピールを信じて、
社員を一人採用しました。しかし、実際に働いてもらうと前職での営業成績は虚偽だったことが
わかり、遅刻も多くやる気も感じられません。
どうして仕事にやる気がないのか聞いて指導内容も工夫しましたが、それでもやる気を見せないので、
結局解雇通知を突きつけることに。
すると、「試用期間中とはいえ、今回の解雇は不当です!労働基準監督署に行って、断固戦います」と
言い出し、実際に裁判をすることに・・・。
たとえ試用期間中であっても、一度採用した従業員を「やる気がない」「結果が出せない」「能力がない」といった理由で解雇するのは困難です。
雇った従業員を解雇するためには、「就業規則に解雇事由が書いてあり、解雇事由に該当するため解雇通知を渡す」という手続きを踏まなくてはなりません。
逆にいえば、就業規則に解雇事由がきちんとあって、「解雇事由に該当している」のであれば、困った社員がいても根拠(条文)を示して解雇できるのです。このようなトラブルに対応するためには、就業規則で採用面接や試用期間中の解雇事由(本採用拒否)を細かく決めておくのが効果的です。
懲戒処分にあたる事由として、
・勤務態度や適正に問題があり、指導を行っても改善が見られないと会社が判断した場合
・口頭、書面の別を問わず、虚偽の経歴や能力を申告した場合
・職場秩序を乱した、素行不良等会社の従業員としてふさわしくないと判断した場合
といった条文があれば、雇用時のリスクを減らせます。
B社では、うつ病になったため、社内の「休職」制度を利用している社員がいます。ここ2年、
休職期間が切れて退職になりそうになると出社し、また休職の連絡をしてくる・・・と
いったことが続いています。
このままだと延々と休職と復職を繰り返すので、なんとかしたい。
本人も「体調が良ければ復帰します。退職するつもりはありません」とのことで、
どう対応すれば良いのか、悩んでいます。
メンタルヘルスは比較的新しいトラブルなので、「個人的な病気や怪我を理由とする休職」を認めている就業規則でも、
メンタルヘルス対策をしていないことが原因で労使トラブルに発展するケースが少なくありません。
メンタルヘルスを理由に休職する場合、自己申告だけではなく主治医の診断書や、会社の調査や会社の指定する医師の判断も参考にすること
・休職期間中も治療に励み、経過をきちんと報告すること。一定期間を通じて改善の見込みがないときは退職事由になること
・休職、職場復帰は会社の指定する医師の判断に基づいて会社が決定すること
など、個々のケースに対応できるように休職や退職に関するルールを変更していけば、「終わりが見えないメンタルヘルスのトラブル」に突入することを避けられます。
C社では、ある社員に対するパワハラの訴えが相次いでおり、処分を検討しています。
ただ、就業規則ではパワハラに関する規程を設けていなかったので、どこからどこまでがパワハラ
なのか、パワハラを行った社員に対する妥当な処分はどうなのか判断が難しく、困っています。
訴えを上げてきた社員からは「処分が下されない場合は訴訟も辞さない」と言われており、
適当な対応はできません。裁判になれば会社の風評にも影響してしまうので、なんとかしたいと
考えています。
パワハラ、セクハラ、アルハラなど、ハラスメント関係のトラブルに対しては、
会社がどう対応するかを盛り込んでおけば適切な対応が可能です。
・パワハラ、セクハラと考えられるような発言、行動は厳に慎むこと
・ハラスメント行為をしていることを知った場合、すぐに上司や社内の相談窓口に相談すること
・ハラスメント行為の訴えがあった場合、会社が事実確認をし、しかるべき懲戒処分に処すること
など、ハラスメントが禁止行為であり、処分もあるという認識を社員が持っていれば、「これくらいは良いと思った」「パワハラ、セクハラという認識はなかった」といった不用意なハラスメントを予防できます。
就業規則を見直すメリットは、「今起きているトラブルを解決できるようにすること」「将来のトラブルを防ぐこと」だけではありません。
就業規則が明確になれば、従業員のモチベーションアップにもつながるのです。
「就業規則で決まっているはずの残業代が支払われない」
「有給制度があるのに利用できない」
「労働時間が守られていない」
「採用面接のときに提示された話と違う」
就業規則と実際の労動条件が違うと、従業員のやる気は下がります。重要なのは、「実情に合った就業規則に手直しする=就業規則通りの会社にある=嘘をつかない会社である」という認識をしてもらうこと。
現状に合わせて就業規則を見直していれば、「入社前に考えていた状況と違った」という雇用条件のミスマッチもなくなるので、社員も安心して仕事に専念できます。
どんな会社も同じような決まりがあるわけではありません。
必ず“その会社独自の考えや決まり事”が存在しています。
それらは明文化しなければ、なかなか気づかないものです。
「当たり前」になってしまっているので、普段は意識しないものです。意識しないからといって、そのままにしてよいわけではありません。
明文化することが欠かせません。
明文化して整理することで、新たな発見があります。会社としての考え方を整理することで、さらにそこから発展させることもできます。
労使トラブルにおいて一番やっかいなのは、「ルールに無いことなので、なんの対応もできない」ことです。二番目にやっかいなのが、「同じようなトラブルなのに、人によって対応が違う」ことです。
相談をしたとき、仕事の指示をあおぐとき、○○部長と△△課長の意見が食い違っているとどんなに優秀な社員でも戸惑います。
就業規則を見直すことで「うちの会社はこういうとき、こう対応すれば良いんだ」「これはしてはいけないことなんだ」という判断基準が一つにまとまり、良い悪いの判断がスムーズに行えます。
誰に相談しても同じ答えが返ってくる会社なら、トラブルになりそうなとき、社員は会社のことを信用していち早く上司や同僚に相談をしてくれるのです。
よしだ労務管理事務所は、対面でのヒアリングを重視しています。
時間をかけて、御社の状況を徹底的にヒアリングしてから就業規則を作っているため、「手早く作っ
てほしい」「多少雑でも良いから、すぐ就業規則が欲しい」といったご要望にはお応えできません。
「世界にただ一つだけ、あなたの会社のためだけに作られた就業規則」を提供しています。
よしだ労務管理事務所は、大きな事務所ではありません。小さな事務所だからこそ、どこにでもすぐ
駆けつけるフットワークの軽さを維持しているのです。
労使トラブルは、ちょっとした不安や心配ごとから大きなトラブルに発展することも少なくありませ
ん。コーヒーを飲みながらちょっと世間話をするくらいの気持ち構いませんので、悩みごとがあれば
ぜひ私に聞かせてください。
「就業規則を作っただけ」では効果は出ません。
今ある就業規則を手直しするときは、
・法改正に基づき新しい規則を作り
・管轄の労働基準監督署に届け出をして
・従業員全員に新しい就業規則を説明して、理解してもらう
・・・ところまでしっかり行う必要があります。
当事務所では、就業規則を手直しすると同時に社員の皆さんに誤解なく新しいルールを理解してもらうためのお手伝いもしています。
どんな感じで就業規則の見直しをしているのか、簡単な流れをご説明します。